キリン ビール コロナ。 コロナ禍直撃のビール業界、特にアサヒに苦境が待ち受ける真の理由(ITmedia ビジネスオンライン)

新型コロナが追い討ち「ビール離れ」に悩む各社の次の手 ついに「シェア非公開」に至った背景

キリン ビール コロナ

写真=iStock. com/kazuma seki こうした厳しい生き残り戦略の結果、市場シェアの集計に関する見解の相違が鮮明化した。 そのため、ビール業界全体の動向データの作成基準が変更され、ビール酒造組合が公表していた出荷データの公表頻度は月次から四半期に、さらには半期ごとに変えられることになった。 2020年からアサヒは販売量の公表を止める。 この発表には2つの重要な意味がある。 1つ目は、アサヒがデータの公表を停止することによって、各社のシェア把握など業界動向の分析が困難になる。 それは市場参加者などにとって大きな問題だ。 2つ目として、アサヒは数量を重視したこれまでの価値観に加え、収益性や効率性を重視した発想を組織に浸透させたいのだろう。 それは、国際競争に対応するために重要な取り組みの1つといえる。 その背景にある要因を考え、わが国のビール企業に求められる取り組みを考えてみたい。 さらに、少子化、高齢化、人口の減少が3つ同時に進み、内需が縮小していることもビールの消費を押し下げる大きな要因と考えられる。 この状況下、国内のビール事業を強化する発想を重視することで企業が長期の存続を目指すことは難しいだろう。 環境の変化に対応し成長を実現するために、各社は成長戦略を策定し、執行している。 国内シェアトップのアサヒは、自社ブランドの競争力向上を重視しているとみられる。 その背景の一つとして、同社が「スーパードライ」のヒットを実現した影響は大きいだろう。 スーパードライのヒットによって、アサヒはキリンとのシェアを縮めることができた。 さらに、2001年には「本生」の投入によって同社は発泡酒でもシェアを獲得し、国内ビール類市場においてトップの地位を手に入れた。 これは、同社の経営陣および組織全体に、強烈な成功体験を植えつけたはずだ。 現在のアサヒの経営方針を見ても、PB商品ではなく自社の名称を冠した商品(ビールなど)を生産し、それを消費者に提供することにこだわっている。 また、アサヒは世界のビール市場における競争力を高めるために、海外の有力ブランドの取り込みにも力を入れている。 それに加えキリンは米国でクラフトビール大手を買収するなど、高付加価値型の商品から低価格帯の量販品まで、幅広いブランドをそろえている。 同時に、キリンはビジネスモデルの再構築にも取り組んでいる。 同社は、ビール事業への依存度を低下させることを目指し、医療など新しい事業の育成を進めて付加価値の源泉を増やそうとしてきた。 すでにキリンの医療事業は売上全体の約16%を占めるまでに成長した。 その中でも注目したいのがアサヒの経営だ。 同社トップは、ビール類を軸とした飲料メーカーとしての生き残りを目指し、必死に改革を進めようとしている。 その1つとして、2020年からアサヒが販売数量の公表を止め、カテゴリー別の売上を金額ベースで公表しはじめたことを考えてみたい。 その決定には、より効率的な経営を実現したいという経営陣の強い思いが込められているように感じる。 なお、データの公表取りやめをめぐって、さまざまな意見が市場関係者などから出ている。 ある意味、経営陣は批判覚悟で組織改革を進めようとしているといってもよいだろう。 それは、ビール酒造組合が公表していた市場動向レポートから確認できる。 このレポートには市場全体の出荷数量がまとめられていた。 また、アサヒは月次販売データをブランド別販売数量として公表してきた。 現在、アサヒは世界的なプレミアムビールメーカーになろうとしている。 そのために同社は海外での買収戦略に取り組んでいる。 昨年、約1. 2兆円でオーストラリアのビール最大手「カールトン・アンド・ユナイテッド・ブリュワリーズ」の買収が発表されたのはその一例だ。 世界のビール市場では、ベルギーの「アンハイザー・ブッシュ・インベブ」が25%程度のシェアを抑えている。 わが国ビール企業との差はあまりに大きい。 アサヒが市場参加者などから評価されるには、販売量の増加に加え、利益率の向上をはじめ、より効率的な経営を実現することが欠かせない。 突き詰めて考えると、アサヒの経営陣は販売数量を重視した情報公開を止めることで、組織全体の意識を改革したいのだろう。 世界的なビール企業として生き残りを目指すには、より成長期待の高い市場に進出して、効率的に付加価値を創出することが欠かせない。 それは、国内での数量競争に臨むこととは根本的に異なる。 アサヒの経営トップが国内のシェア争いを不毛と指摘した裏側には、こうした真意があるのだろう。 各社がそれぞれの事業戦略を執行し、収益の増大につなげることが、株主をはじめとする利害関係者からの信頼を獲得することにつながる。 それができれば、企業はより長期の視点でヒト・モノ・カネをひきつけ、さらなる成長を目指すことができる。 バブル崩壊後、わが国では急速に資産価格が下落し、経済環境が悪化した。 企業は守りの心理を過度に強め、成長のためにリスクをとることに慎重になってしまった。 これはビールに限らず、さまざまな業界にあてはまる。 それが、「失われた30年」などと呼ばれる長期の景気停滞につながった。 バブル崩壊から30年程度が経過し、アサヒやキリンは成長の実現に向けて体制を整え、そのための戦略を実践している。 現在、新型コロナウイルスによる肺炎の拡大などを受けて世界経済の先行き不透明感は高まっている。 中国では人の移動が大きく制限され、世界のサプライチェーンが混乱している。 それは、世界経済全体にとって無視できない下方リスクだ。 中国の需要を取り込んできた新興国や資源国をはじめ、世界各国の景気下振れ懸念は高まっている。 それに伴い、円高や買収した企業の業績悪化などのリスクは顕在化しやすい。 徐々に国内ビール企業の業績懸念が高まる展開は否定できない。 それと同時に、ビール各社には内外の消費者ニーズを確実に取り込み、安定して収益を生み出す体制を目指すことも求められる。 重要なことは、不確実性が高まり、需要低迷への懸念がある中にあっても、多くの人が欲しいと思うヒット商品を生み出すことができれば、企業の成長は可能ということだ。 その実現を目指し、ビール各社が創意工夫を凝らして新しい発想の取り込みと、その実現を通して新しい飲料、さらにはライフスタイルを社会に提示することを期待したい。 ---------- 真壁 昭夫(まかべ・あきお) 法政大学大学院 教授 1953年神奈川県生まれ。 一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。 ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。 みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。 ---------- (法政大学大学院 教授 真壁 昭夫) 外部サイト.

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余ったビールを消毒用に アサヒとキリン、無償で提供へ [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

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アサヒグループ本社ビル(東京都墨田区、提供:ゲッティイメージズ) 「業務用ビール」がコロナ禍でピンチ ビール大手各社における5月の販売動向は、発泡酒や新ジャンル(第三のビール)を含む「ビール類」のカテゴリーで、キリンビールが9%減、サッポロビールが20%減、サントリーが4%減、数量ベースでの公表をやめたアサヒは金額ベースで22%減だった。 一方、発泡酒などを含まない純粋な「ビール」の販売実績は、キリンが41%減、サッポロが39%減、サントリーが55%減だった。 アサヒは全体の販売数量を公表していないが、主力のスーパードライは35%減となっている。 純粋なビールの販売動向だけを見ると、アサヒだけが大幅に落ち込んでいるわけではなく、むしろ他社よりも影響が軽微にも見えるが、全体の業績という点ではそうはいかなくなる。 アサヒの売上高に占めるビールの比率は高く、しかも、ビールの販売数量のうち居酒屋など業務用の販売ルートが半分を占める。 業務用ビールの販売は、宴会自粛で居酒屋が経営不振に陥っていることから急激に減少しており、すぐにこの状況が改善するとは考えにくい。 業務用ビールの販売が落ち込んでいるのは各社共通だが、ビール比率の高いアサヒの場合、業績への影響が大きくなってしまうのだ。 関連記事• 新型コロナの影響がコンビニ加盟店を直撃。 売り上げ激減に加え従業員の感染不安で営業難しく。 オーナーは国や本部の支援の薄さを嘆く。 コロナ対応で進むテレワーク化。 終息後も思い切って「オフィスを無くす」企業が続々と登場。 本当に職場は不要か、意外なメリットにも迫る。 コロナ対策で急速に進んだテレワーク。 今後「無かったこと」になるのか、それとも「新しい働き方」になるか。 テレワーク研究の第一人者に直撃。 ドラッグストアに朝「殺到」しているのは本当に高齢者か。 購買データから真相を解明した。 「トイレットペーパー買い占め」騒動時の動静も明らかに。 新型コロナによる緊急事態でも休めないコンビニ。 「社会インフラ」として加盟店は不安を抱えつつ営業を続ける。 本部に先んじて独自の対策を打ち出した現場の迫真ルポ。

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新型コロナ:キリンホールディングス、期限定めず出社上限3割に :日本経済新聞

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写真=iStock. com/kazuma seki こうした厳しい生き残り戦略の結果、市場シェアの集計に関する見解の相違が鮮明化した。 そのため、ビール業界全体の動向データの作成基準が変更され、ビール酒造組合が公表していた出荷データの公表頻度は月次から四半期に、さらには半期ごとに変えられることになった。 2020年からアサヒは販売量の公表を止める。 この発表には2つの重要な意味がある。 1つ目は、アサヒがデータの公表を停止することによって、各社のシェア把握など業界動向の分析が困難になる。 それは市場参加者などにとって大きな問題だ。 2つ目として、アサヒは数量を重視したこれまでの価値観に加え、収益性や効率性を重視した発想を組織に浸透させたいのだろう。 それは、国際競争に対応するために重要な取り組みの1つといえる。 その背景にある要因を考え、わが国のビール企業に求められる取り組みを考えてみたい。 さらに、少子化、高齢化、人口の減少が3つ同時に進み、内需が縮小していることもビールの消費を押し下げる大きな要因と考えられる。 この状況下、国内のビール事業を強化する発想を重視することで企業が長期の存続を目指すことは難しいだろう。 環境の変化に対応し成長を実現するために、各社は成長戦略を策定し、執行している。 国内シェアトップのアサヒは、自社ブランドの競争力向上を重視しているとみられる。 その背景の一つとして、同社が「スーパードライ」のヒットを実現した影響は大きいだろう。 スーパードライのヒットによって、アサヒはキリンとのシェアを縮めることができた。 さらに、2001年には「本生」の投入によって同社は発泡酒でもシェアを獲得し、国内ビール類市場においてトップの地位を手に入れた。 これは、同社の経営陣および組織全体に、強烈な成功体験を植えつけたはずだ。 現在のアサヒの経営方針を見ても、PB商品ではなく自社の名称を冠した商品(ビールなど)を生産し、それを消費者に提供することにこだわっている。 また、アサヒは世界のビール市場における競争力を高めるために、海外の有力ブランドの取り込みにも力を入れている。 それに加えキリンは米国でクラフトビール大手を買収するなど、高付加価値型の商品から低価格帯の量販品まで、幅広いブランドをそろえている。 同時に、キリンはビジネスモデルの再構築にも取り組んでいる。 同社は、ビール事業への依存度を低下させることを目指し、医療など新しい事業の育成を進めて付加価値の源泉を増やそうとしてきた。 すでにキリンの医療事業は売上全体の約16%を占めるまでに成長した。 その中でも注目したいのがアサヒの経営だ。 同社トップは、ビール類を軸とした飲料メーカーとしての生き残りを目指し、必死に改革を進めようとしている。 その1つとして、2020年からアサヒが販売数量の公表を止め、カテゴリー別の売上を金額ベースで公表しはじめたことを考えてみたい。 その決定には、より効率的な経営を実現したいという経営陣の強い思いが込められているように感じる。 なお、データの公表取りやめをめぐって、さまざまな意見が市場関係者などから出ている。 ある意味、経営陣は批判覚悟で組織改革を進めようとしているといってもよいだろう。 それは、ビール酒造組合が公表していた市場動向レポートから確認できる。 このレポートには市場全体の出荷数量がまとめられていた。 また、アサヒは月次販売データをブランド別販売数量として公表してきた。 現在、アサヒは世界的なプレミアムビールメーカーになろうとしている。 そのために同社は海外での買収戦略に取り組んでいる。 昨年、約1. 2兆円でオーストラリアのビール最大手「カールトン・アンド・ユナイテッド・ブリュワリーズ」の買収が発表されたのはその一例だ。 世界のビール市場では、ベルギーの「アンハイザー・ブッシュ・インベブ」が25%程度のシェアを抑えている。 わが国ビール企業との差はあまりに大きい。 アサヒが市場参加者などから評価されるには、販売量の増加に加え、利益率の向上をはじめ、より効率的な経営を実現することが欠かせない。 突き詰めて考えると、アサヒの経営陣は販売数量を重視した情報公開を止めることで、組織全体の意識を改革したいのだろう。 世界的なビール企業として生き残りを目指すには、より成長期待の高い市場に進出して、効率的に付加価値を創出することが欠かせない。 それは、国内での数量競争に臨むこととは根本的に異なる。 アサヒの経営トップが国内のシェア争いを不毛と指摘した裏側には、こうした真意があるのだろう。 各社がそれぞれの事業戦略を執行し、収益の増大につなげることが、株主をはじめとする利害関係者からの信頼を獲得することにつながる。 それができれば、企業はより長期の視点でヒト・モノ・カネをひきつけ、さらなる成長を目指すことができる。 バブル崩壊後、わが国では急速に資産価格が下落し、経済環境が悪化した。 企業は守りの心理を過度に強め、成長のためにリスクをとることに慎重になってしまった。 これはビールに限らず、さまざまな業界にあてはまる。 それが、「失われた30年」などと呼ばれる長期の景気停滞につながった。 バブル崩壊から30年程度が経過し、アサヒやキリンは成長の実現に向けて体制を整え、そのための戦略を実践している。 現在、新型コロナウイルスによる肺炎の拡大などを受けて世界経済の先行き不透明感は高まっている。 中国では人の移動が大きく制限され、世界のサプライチェーンが混乱している。 それは、世界経済全体にとって無視できない下方リスクだ。 中国の需要を取り込んできた新興国や資源国をはじめ、世界各国の景気下振れ懸念は高まっている。 それに伴い、円高や買収した企業の業績悪化などのリスクは顕在化しやすい。 徐々に国内ビール企業の業績懸念が高まる展開は否定できない。 それと同時に、ビール各社には内外の消費者ニーズを確実に取り込み、安定して収益を生み出す体制を目指すことも求められる。 重要なことは、不確実性が高まり、需要低迷への懸念がある中にあっても、多くの人が欲しいと思うヒット商品を生み出すことができれば、企業の成長は可能ということだ。 その実現を目指し、ビール各社が創意工夫を凝らして新しい発想の取り込みと、その実現を通して新しい飲料、さらにはライフスタイルを社会に提示することを期待したい。 ---------- 真壁 昭夫(まかべ・あきお) 法政大学大学院 教授 1953年神奈川県生まれ。 一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。 ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。 みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。 ---------- (法政大学大学院 教授 真壁 昭夫) 外部サイト.

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