遊び じゃ ない あれ は デート 俺 は そう 思っ て た けど。 デートと遊びの違いは?女性を悩ます「これってデート?遊び?」問題に迫る

キリコ「所詮、遊びだ」 セシリア「何ですって?」【前半】|エレファント速報:SSまとめブログ

遊び じゃ ない あれ は デート 俺 は そう 思っ て た けど

01 ID:61yoPfPA0 『クソッ、なんだあの兵器は!』 『ATなんかで太刀打ちできるシロモンじゃねぇぞ!』 ギルガメスとバララント、その両陣営は開戦の理由も忘れ、百年にもおよぶ戦争を続けていた。 そんな泥沼の戦争の末期、俺は第24メルキア方面軍戦略機甲兵団特殊任務班X-1、通称レッドショルダーに所属していた。 誰の目ともつかぬ視線に、監視されながら。 終戦間近と噂される中、俺はまた最前線に送りだされていた。 敵の兵器偵察及び破壊という重要任務。 協定により使用が禁じられている、宙空での使用を想定に入れたATを凌ぐ性能を持つ兵器。 兵器について与えられた情報はそれだけだった。 49 ID:61yoPfPA0 そして、俺達はその兵器と対峙した。 装甲から曝け出された女パイロット、生身では認識ほぼ不可能な機動力、そして圧倒的な火力。 その全てがATとかけ離れていた。 一騎当千と謳われるレッドショルダーが、赤子の如くねじ伏せられ、屍を積んでいった。 「ふぉおおおっ!」 俺は捨て身の攻撃により、なんとか一体を墜落させた。 だが俺のATも大破し、その兵器の前にうち捨てられた。 空を撫でるように忍び寄る兵器。 悪魔に囲まれ、俺は絶体絶命の窮地に立たされた。 俺もついに死ぬ。 そんな考えが俺の脳裏を駆けた。 55 ID:61yoPfPA0 俺は無我夢中で、撃墜した目の前の新兵器に駆け寄り、起動を試みていた。 そして、俺はその兵器を起動させた。 それが、俺を新たな戦場に導く事を知らずに。 44 ID:61yoPfPA0 「皆さん入学おめでとう! 私は副担任の山田真耶です」 俺は学園にいた。 何の冗談かはわからないが、確かに今、学園と呼ばれる所にいた。 この前の作戦で俺は敵兵器を動かし、辛くも戦場から落ち延びた。 しかしそれが、この状況を招く原因になるとは知る由もなかった。 どうやらあの兵器は少し特殊なものだったらしい。 22 ID:61yoPfPA0 第三中立惑星地球の女にしか操作する事の出来ない兵器、インフィニット・ストラトス。 通称IS。 それを他の惑星出身の男である俺が動かした。 当然、その奇異な事象を軍が見逃すはずもなく、俺は研究対象としてここに転属させられたのだ。 この学園という空気に、俺は馴染めていなかった。 軍基地のように、微弱に流れる緊張感も無ければ、閉塞感も無い。 ここにいれば絶対安全という、温い安息感がここにはあった。 俺はこの初めての感覚に、言いようのない安心感と違和感を、胸に湧かせていた。 30 ID:61yoPfPA0 「……」 山田「あ、あの~……」 「……」 山田「キ、キリコ君? 今皆で自己紹介してて、あから始まってカ行まで来たんだよね。 自己紹介してくれるかな? だめかなぁ?」 教官と思われる人物も、この戦時にどこか平和ボケしている。 小うるさいだけで能の無い教官もいるが、それよりは遥かにマシか。 31 ID:61yoPfPA0 立ちあがり、辺りを見回す。 女しかいない。 当然か。 俺を取り囲む生徒の視線には、妙に熱っぽいものが含まれていた。 それは殺意や敵意というものでは無いが、妙に居心地の悪い視線だった。 こいつらがあの兵器を駆り、あのレッドショルダー部隊を壊滅させる程の兵士になるのか。 俺にはにわかに信じ難かった。 31 ID:61yoPfPA0 キリコ「……」スッ 「「「座るんかい!」」」 キリコ「……」 どうやら俺は、ここでも静かに生きる事ができないらしい。 「おい、貴様。 70 ID:61yoPfPA0 キリコ「……?」 「誕生日は7月7日。 嫌いな食べ物は、ホヤだったか?」 キリコ「……っ! あんたは……姉さんか?」 「あんたではない。 ここでは織斑先生と呼べ小僧」 キリコ「……こんな所で、あんたと会うとはな……てっきり、死んだのかと思っていた」 千冬「貴様、よほど殴られたいらしいな……三度目は無いぞ。 織斑先生と呼べ」 キリコ「……織斑先生、貴女はどうして、ここにいる」 千冬「私はここの教師だ。 私が教師をしている事が気にくわんのか」 キリコ「……サンサで死んだはずだ」 千冬「死んでいないからここにいるのだ。 85 ID:61yoPfPA0 千冬「……後で話がある。 私の部屋に来るように」ボソ キリコ「……」 「キリコ君、千冬様の事を姉さんって呼んでたけど……」 「も、もしかして姉弟なのかな?」 「男でISを操縦できるのもそれが関係?」 「でも全然似てないよ?」 千冬「静かにしろ。 山田先生がこれより学園に関しての諸注意をしてくれる。 二度は言わんから、しっかりと聞くように」 山田「はい。 封印したはずの、あのサンサの記憶が脳裏に浮かぶ。 この閉ざされた不可侵域での再会が、一体何を意味するのか、俺には見当もつかなかった。 49 ID:61yoPfPA0 「あの人よ。 世界で唯一ISを使える男性って」 「事故か何かで起動させちゃったんだってねぇ」 「大ニュースのはずなのに、テレビとかでは全然見なかったよねぇ」 「あれじゃない? きみつほじってやつ」 「今は戦争中だしねぇ……」 「ねぇねぇ話かけてみたら?」 「で、でも……なんかスゴイ空気まとってない? 孤高って感じ……」 「あの人、千冬様の弟さんらしいよ」 「あー、どうりでー」 「でも顔似てるかなー……でもカッコいいのは確かねぇ……」 見世物小屋というものを見た事は無いが、恐らくこういうものなのだろう。 奇異の視線を向け、見世物の少しの挙動で囁き合う。 この歳の女にどういう傾向があるのか、俺にはよくわからない。 が、少なくとも俺とは相容れないようだ。 「おい」 キリコ「……」 「おいお前、聞いているのか」 キリコ「……なんだ」 「……ちょっといいか」 キリコ「……何の用だ」 「いいからついてこい」パシッ キリコ「腕を掴むな。 61 ID:61yoPfPA0 「わ、私が、わからないのか?」 キリコ「生憎だが、記憶に無いな」 「なっ……」 キリコ「……どこかで会ったか?」 「ほ、本当にわからないのか……」 キリコ「悪いが、俺に学生の知り合いはいない。 26 ID:61yoPfPA0 キリコ「……で」 「……な、なんだ」 キリコ「俺に用があるんだろう。 なんだ」 「あ、あぁ……そうだったな……」 キリコ「……」 「……お前と、話がしたい」 キリコ「……」 「……」 キリコ「話、か」 「……あぁ」 キリコ「……わかった、ついて行こう」 「……そうか。 18 ID:61yoPfPA0 キリコ「……何の用だ」 「……」 キリコ「用が無いなら、俺は戻るぞ。 あの兵器について、色々お勉強とやらをしなきゃならないんでな」 「ま、待てっ」 キリコ「……」 「本当に……私を覚えていないんだな……」 キリコ「……あぁ。 23 ID:61yoPfPA0 箒「そうだ……惑星サンサの研究施設で、お前と私は出会った」 キリコ「お前は、地球人のはずだ……」 箒「私は……私達家族は、姉の研究の為にサンサにいた……」 キリコ「何の、研究だ」 箒「IS黎明期、他の惑星の住人でも起動ができるのかという、実験の為に……」 キリコ「っ……」 箒「お前もあの場所にいたんだ。 69 ID:61yoPfPA0 キリコ「話は、それだけですか」 千冬「まぁ待て……」 キリコ「……」 千冬「……お前の経歴を見せて貰った」 キリコ「……」 千冬「18歳でメルキア軍曹長、その歳では中々異例の早さだな。 その点は褒めてやろう」 キリコ「……」 千冬「だがな、あれはどういうことだっ!」バンッ キリコ「何の事だ」 千冬「とぼけるな。 何故レッドショルダーに所属していたか、その理由を話せ」 キリコ「……」 千冬「話せと言っているんだ。 22 ID:61yoPfPA0 千冬「理由など無いだと? あの日の事を忘れたとは言わせんぞ。 サンサの……私達の両親が死んだあの日を」 キリコ「っ……覚えては、いる」 千冬「だが何も感じない、か?」 キリコ「違う! 俺は……」 バンッ 千冬「では何故レッドショルダーに魂を売った! 覚えているのなら、そんな所業はできるはずないだろう!」 キリコ「自分から入った、訳じゃない……」 千冬「……では何故入った」 キリコ「元は、ただの一兵士だった。 69 ID:61yoPfPA0 千冬「……誰だ」 キリコ「……ヨラン・ペールゼン」 千冬「……レッドショルダー創設者、か」 キリコ「そうだ。 俺はヤツの指名で、レッドショルダーに配属された」 千冬「ペールゼンなんてそんな軍のお偉方が、何故お前のような凡下を監視する必要があった。 お前はただの一兵士に過ぎん」 キリコ「……」 千冬「何故、ヤツはお前を監視していた。 話せ」 キリコ「……」 千冬「言いたくないか、或いはさっきのが言い訳だったか。 82 ID:61yoPfPA0 千冬「……見そこなった。 昔のお前は、寡黙だが心優しい少年だった。 私も、そんな少年が好きだった。 本当の弟と思っていたさ……」 キリコ「……」 千冬「お前は、変わったな……戦争が、何もかも変えてしまったよ……」 キリコ「……姉さん」 千冬「……あの時死んだ父さんと母さんが今のお前を見たら何と言うか、よく考えることだ。 もう部屋に戻れ、キリコ・キュービィー。 52 ID:61yoPfPA0 山田「皆さんも知っての通り、ISの軍事利用はギルガメス・バララント両陣営での協定により禁止されています。 元々は宇宙空間での作業を効率良くする為のものであり、軍事利用をしようものならば非人道的なまでの性能を発揮する為、競技用と定められました」 千冬「この星のとある科学者に開発されたが、技術の産出元はクエントだ。 故に、未だによくわからない技術も多い。 開発した科学者以外は、全くと言っていい程ISのコアを解析できないのが現状だ」 山田「よって、ISの研究をする為に、地球は第三不可侵宙域と定められました。 アレギウム、サンサに次ぐ指定ですが、地球は建設的な方向で、不可侵宙域指定を受けた星なんですよ」 キリコ(よく言う……協定用とは謳っているが、戦場に放り込めば即戦力、前線を崩壊させる力もある……) 山田「では、ここまでで質問のある人ー?」 キリコ(武器もATなどとは格段に違う……あの時、パイロットを狙ったのにも関わらず傷一つ無かったのがいたが、 あの防御機構が原因か……) 山田「えぇと……キリコ君。 06 ID:61yoPfPA0 キリコ「……何故、パイロットはむき出しなのに、傷一つ負わないんだ」 山田「はい。 それはシールドバリアーのおかげです。 ISは常に搭乗者を守る不可視のシールドを張っているんです。 これはシールドエネルギーを使用していて、被弾するたびにエネルギーを消耗してしまいます。 試合では、このエネルギーが無くなった方が負けとなります」 キリコ「……そうか。 参考になった」 山田「えぇ。 わからない事があったら何でも聞いて下さいね。 何せ私は先生ですから」 千冬「……おい」 キリコ「……何ですか」 千冬「今お前が聞いた事は、基礎中の基礎だ。 それがどうだ、お前はわずか半月足らずで回復した。 あのカルテの記載ミス、そう考える他無いだろう。 故に、お前は読める状態であったはずだ。 違うか」 キリコ「……」 千冬「……まぁいい。 後一週間で覚えろ、絶対にな」 キリコ「……あの量を、ですか」 千冬「でなければ謹慎だ。 軍隊風に言えば、営倉入りか。 レディに話しかけられたら、礼儀正しく応答するのが、男の役割なのを知らなくて?」 キリコ「構って欲しいなら他のヤツにしろ。 俺はコイツを見るので忙しい」 セシリア「構っ……おほん。 私に声をかけられるだけでも名誉だと言うのに、なんなんですのその言い方は。 この星では常識になりつつあっても、惑星を転々としていた俺には夢物語みたいなものだ」 セシリア「成程……流浪の民、ですか。 通りで礼儀がなっていない訳ですわね」 キリコ「……」 セシリア「まぁ、そういう事でしたら、色々と教えて差し上げますわよ? 下々の者の面倒を見るのが、貴族の務めですから。 まぁ、泣いて頭を下げるなら、ですけど」 キリコ「……よく喋るな。 唯一人と、私は言ったのよ?」 キリコ「女ではというオチだろう。 ここでの唯一の個人空間。 同居人はいるようだが、少なくとも他所より落ちつけるのは確かだ。 トントンッ キリコ「……入るぞ」 ガチャッ キリコ(シャワーの音か……勝手にあがらせて貰おう) キリコ「これは……」 キリコ(柔らかそうなベッド、明るい内装……全く別次元の扱いだ……) キュッ キリコ「ん?」 「ん……あぁ、私と同室になったのか。 二人部屋なのだから、お前だけの部屋じゃないのは当たり前だ」 箒「だ、だが……ここは私の……」 キリコ「どうやら、お前と同室らしいな。 自分の嫌な事を知っている人間と、好き好んで同室にして貰う道理がどこにある」 箒「ぐっ……」ギリギリ キリコ「くっ……良いから、この剣を降ろせ。 落ちついて話もできない」 箒「……わかった。 わかるだろう」 箒「あぁ、わかるさ……痛い程に……」 キリコ「……」 箒「だがな……あの日の出来事を、私は絶対に忘れない……お前が私にしてくれた事を、忘れる訳が無いだろう……」 キリコ「……」 箒「お前は、死んだとばかり思っていた……だが、生きていてくれた。 こうしてまた、私の前に現れてくれた……。 それが、私にはどれだけ嬉しかったか……お前にわかるか?」 キリコ「……」 箒「だが、お前は忘れてしまった。 眺めが良いだろう」 箒「……」 キリコ「他の取り決めも、お前の好きなようにしろ。 シャワーを浴びる時間なんかもな」 箒「……すまない」 キリコ「……」 キィッ…… ガチャンッ キリコ「……」 キリコ(間違いない。 アイツは、俺の過去を知っている。 探せば男用のくらいあるだろう」 「あ、あたしも行くー!」 キリコ「……」 「じょ……冗談です……」 キリコ「……」スタスタ 「ほへー……い、威圧感スゴイ……」 「まさに孤高だね……」 「噂じゃ軍人さんだったらしいよ」 「確か、軍曹さんだったっけ」 「偉いの?」 「偉い方だよ、あの歳で」 俺の知らない過去を知られている……この不気味な感覚。 俺はこの学園でも、何かに追われねばならないらしい。 ようやく、俺はこの学園生活にも慣れてきた。 同室の箒は、まだ何か言いたげにこちらを見てくるが……。 何も言わないのであれば、静かにしてくれているなら、俺はそれで良い。 あの記憶を、思い出させてくればければ。 千冬「これより、再来週に行われるクラス対抗戦に出るクラス代表生を決める。 クラス代表生はまぁ言いかえるならクラス長だ。 様々な行事などにも狩りだされ、委員会にも出る事になるだろう。 自薦他薦は問わない。 協定に守られ、実戦もせずただのうのうと訓練をしているだけで良い。 遊びと何が違う」 セシリア「のうのうと、しているだけ……」 キリコ「ATには、搭乗者を守る機構も無かった。 ISのあの防御性能で、命を危険に晒すなんて言葉をよく吐けるものだ」 セシリア「AT? ハンッ、あんな鉄の棺桶の最低な乗り物と比較しないで頂きたいものですわね……。 そこまで言うなら、貴方と私の一対一で決闘しましょう。 それでハッキリしますでしょう? どちらが優れた人種なのか、どちらが優れた兵器だったのか、ね」 キリコ「俺も使うのはISだろうが、良いだろう。 その話のってやる」 セシリア「手を抜いたりしない事ですわ。 もし貴方が負ければ、一生を私の小間使いとして生きて貰いますからね」 キリコ「……」 セシリア「……」 山田「お、織斑先生……」 千冬「いい、やらせておけ。 いつも死ぬ思いで生きてきた。 悪いが、同じISに乗れるなら、負ける気はしない」 セシリア「……」 キリコ「……ハンデは、本当にいらないのか」 セシリア「……いるものですか」 キリコ「……そうか」 「「「……」」」 千冬「話は纏まったな。 では、勝負は次の月曜、第三アリーナで行う。 それだけ返事をくれれば良い」 『まぁ整ってますよー、もう切っていいですかー』 「そうか、ならいい。 期日はこちらが指定する。 勝手な行動はしないようにな」 『はいはーい』 「……閣下、本当にあのような人物に事を任せてもよろしいのですか」 「問題は無い。 試すまでも無く……それに、あの博士も……」 「あぁ、確かにキリコも篠ノ之も異常だ。 まぁそれぞれ意味は違うがな。 だが、だからこそ、この手に収めねばならない……」 「ですが……」 「無論、このシナリオの人選は選り抜きの者だけだ。 それに得る物が大きければ、それだけリスクというものは発生する。 が、それも計算の内だ。 お前が心配する必要はどこにも無い」 「……そうですか」 「カースンが我々に流したあのファイルは、実に有益なものだ。 全てを解明するには犠牲を弄したが、これを利用しない道理は無い」 「……例の二人の事ですね」 「……ふふっ、そうだ。 既に事は動き出している。 キッカケがあれば、流れが出来、そして物事は流されていく……流されやすい方にな」 「……」 「ペールゼン……キリコはお前には従わなかったが……ふっ、私は違う。 ローラーダッシュと共に、戦地は廻る。 装甲騎兵の記憶は、学園という白昼夢にも似た甘い時の中でも、色褪せる事は無い。 忌まわしき記憶の先に眠る、自分にも流れたあの日常。 それと再会を果たしてもなお、断末魔が目を晦ませる。 家族も、友も、サンサも、この鉄の温もりには勝てぬ。 次回、「模擬決闘」 あの日を生きるか、明日を嘆くか。 話は聞いている」 ウォッカム「おや、私の事を御存じなのですか。 これは光栄です……」 ペールゼン「私に、何か用かね。 ただすれ違うだけなら、私に頭を下げる理由にはならないと思うが」 ウォッカム「……RSに関する軍事裁判、貴方の見事な雄弁を拝聴させて頂きました。 それに感銘を受け、こうして貴方と会話ができればと、思っただけです……」 ペールゼン「あの裁判にあげられた案件は、ほぼ全てが誇張されていた。 私の日記を盗んだのは、君だったのか」 ルスケ「日記にしては、莫大なデータ量がありました。 しかし反面、中々読み応えのあるものでしたが……」 ウォッカム「ふふっ、その日記も全て見させて貰いましたよ」 ペールゼン「……それで、君はあの日記を見てどう思ったのだ」 ウォッカム「素晴らしい、この一言に尽きますな。 異能生存体、そんなものが実在するとは、私は夢にも思わなかった」 ペールゼン「……所詮、あれは夢物語だ」 ウォッカム「あれ程の発見を、そんな言葉で片付けてしまうのですか?」 ペールゼン「私は、夢から覚めた。 だから、私にはわかる。 キリコには近付くな、それが、君の為でもある」 ウォッカム「生憎、私は周到な人間です。 勝算の無い事は、絶対にしない。 どんな事でも、ね……」 ペールゼン「……どうやら、キリコにISを与えたのも君のようだな」 ウォッカム「いえ、あれは偶然でした。 最初はヤツの異能さをIS相手に見せて貰おうと思ったのですが……予想外の結果でしたよ」 ペールゼン「異能生存体は機械に対して高い親和性を持つ上に、生き残る為なら利己的に、利他的に環境を変えてまで生き残る。 これから、色々と準備が必要なのでな」 ウォッカム「私もです……では……」 カツッ カツッ ルスケ「……ペールゼンにも、情報は届いているようですね」 ウォッカム「ヤツは抜け目の無い男だ。 それくらい知っていて当然だ」 ルスケ「……ヤツも、何か仕掛けてくるでしょうか」 ウォッカム「ふっ、さぁな。 今急ピッチで調整しているそうだ」 キリコ「専用機?」 「専用機っていうのは、代表候補生や企業の人なんかの為にカスタムメイドされた機体の事だよ。 政府からの援助も出るんだって」 「一年のこの時期に貰えるのは、すっごい事なんだよー」 キリコ「そんな大層なものを、俺にくれるのか」 千冬「お前はイレギュラーだからな。 クラス代表決定戦、貴方と私では勝負は見えていますけど……。 私が専用機、貴方が訓練機ではフェアではありませんからね……」 キリコ「……お前も持っているのか」 セシリア「ご存じ無いのですか? ふっ、いいですわ。 ISのコアは完全なブラックボックス、開発者の篠ノ之束博士にしか作成できないんですのよ。 世代なんて風に言われてますが、結局、武装や機構を換装しただけで、悪く言えばマイナーチェンジのようなものしかできないでいますの」 キリコ「篠ノ之……」 箒「……」 「でも、その篠ノ之博士はコアを一定数作ったところで蒸発しちゃったんだって」 キリコ(同じ名前……) 千冬「どうだ、わかったかルーキー」 キリコ「……えぇ」 「先生」 千冬「何だ」 「篠ノ之さんって……もしかして、篠ノ之博士の関係者なんでしょうか」 千冬「……そうだ。 またあの炎がちらついている。 俺の忘れかけていた記憶が、縺れた糸を縫って、点と点を結ぶように、このISという兵器を軸にして回っている。 俺は、知らなければならないのか。 あの忌まわしい記憶を……。 ここまでで質問はありませんか?」 キリコ(意識を持つ兵器……尋常では無いな。 だが、実際に動かす機会が無ければ意味が無い。 このままでは、あのおしゃべりな黄色い髪に負けてしまう。 それは明白だった。 キリコ(……篠ノ之) ここで、ヤツに頼るのか。 IS開発者の妹、それなりに覚えもあるはずだ。 贅沢は言っていられない。 そして、ヤツを探る為にも……。 飯を食いながらでも構わない」 箒「……今更か」 キリコ「俺だけというのが嫌なら、他のヤツも誘えば良い。 日替わり二つお待ち」 キリコ「すまない」 箒「あっ……」 キリコ「……どうした、お前も早く取れ。 後ろがつっかえている」 箒「あ、あぁ……わかった」 キリコ「このテーブルで良いだろう。 飯を食う前に、いいから話せ」 キリコ「……ISについて、教えて欲しい」 箒「……私が、か」 キリコ「あぁ。 このままでは、あのセシリアとかいうのに、負けるからな」 箒「……良いじゃないか、べつに。 ヤツは代表候補生だ、負けても恥ではない」 キリコ「篠ノ之博士とやらの家族なら、何かISに覚えがあると思って頼んだ」 箒「……言っただろう、私はあの人じゃない」 キリコ「知っている」 箒「だったら……」 キリコ「……俺がこう言うのも何だが、お前と一緒に訓練していれば、もしかしたら俺の記憶が戻るかもしれない。 コイツは、篠ノ之博士とやらの妹らしいからな」 「なっ、なんですって?」 箒「……」 キリコ「だから、あんたは自分の飯でも食べていてくれ。 時間を過ぎれば、懲罰だろう」 「ぐぬぬ……い、いいわ。 別にいいだろう」 箒「そ、そういえばそうだったな……二つ上だったか」 キリコ「あぁ。 というより、お前らは二つ下なのか」 箒「そうだ。 まぁ、お前は特例だし、それくらいの差異はあるだろう」 キリコ「……だろうな」 箒「……お前の場合10個上と言われても納得するが」 キリコ「何か言ったか」 箒「いや、何でもない。 並の反射速度では無いな) キリコ「ま、待て……」 箒「なんだ、まだ決着はついてないだろう。 それに、お前も中々に動けている。 さぁ構えろ!」 キリコ「……」 「キ、キリコ君大変だねー……」 「頑張ってー!」 俺は、どうやら頼みこむ相手を間違えたらしい。 期日までの間、俺はこうしてひたすら竹刀というもので互いに打突しあう競技に駆りだされる事となった。 中々物にするじゃないか」 キリコ「はぁ……」 箒「ほら、これでも飲め」ポイッ キリコ「……あぁ」パシッ 箒「……」 キリコ「……」ゴクゴク 箒「……昔も、こういう事があったな」 キリコ「……その話は、長いのか」 箒「ま、まぁ聞け。 基本外に出る事はあまりなかったが、たまに私とお前だけで外出していたんだ」 キリコ「……」 箒「そして、お前が初めて私の家に来た。 その時に何をして遊ぼうかという話になったんだが、何を考えたのか、お前は竹刀に興味を持ってな。 俺は幼少の時の記憶はほとんどない。 姉さんを思い出したのだって、かろうじてのものだ。 それ以外は、思いださないし、思い出したくもない」 箒「……」 キリコ「……」 箒「……そうか」 キリコ「……お前が、悪いんじゃない」 箒「でも、私がまた過去の事を聞くと、この前みたいに発作を起こすのだろう?」 キリコ「……」 箒「だったら……私は、お前に近づかない方が良いのかもしれない……。 私は、お前が……キリコが過去を思い出さなくても、生きていてくれるなら、それで良いから……」 キリコ「……」 箒「それに、おせっかいだったようだな……お前にとっては、赤の他人なんだから……。 お前と、離れてはいけない、と」 箒「……」 キリコ「これがどういう事なのか、俺は知らない。 だが、俺は後悔はしたくない。 な、なんでもない……」 キリコ「……」 箒「……はぁ」 キリコ「……ほら」ポイッ 箒「お、おわっと……」パシッ キリコ「お前も疲れただろう。 俺は、剣の振るい方といういつ使うのかわからない技量を身につけ、戦いに臨むのだった。 キリコ「……」 箒「どうした、緊張しているのか」 キリコ「いや……俺は、無駄に時間を過ごしたのかと、反省していただけだ」 箒「お、お前が頼みこんできたのだろうが!」 キリコ「それに、聞きたくもない思い出話も山ほどされたしな」 箒「っ……」 キリコ「……」 箒「……」 キリコ「まぁ、軍にいた頃の体力は戻っただろう。 遠距離特化らしい、気をつけろ」 キリコ「……遠距離、か。 銃器の覚えはあるようだな」 箒「慣れたものじゃないのか?」 キリコ「……さぁな」 箒「ふっ……」 山田『キリコ君! キリコ君!』 キリコ「……」 山田『キリコ君の専用ISが来ました!』 箒「ついに来たか……」 千冬『キュービィー、すぐに準備をしろ。 アリーナ使用時間は限られている。 それは、競技用という表の顔を否定するように、重く、鋭く、己の体を誇示していた。 一騎当千のレッドショルダーを屠った兵器。 それが、俺に与えられた。 俺は柄に合わず、心臓を跳ねあがらせていた。 キリコ「これが……」 山田『これが、キリコ君の専用IS。 セイバードッグです』 キリコ「……なんだ、その御大層な名前は」 千冬『この星のジェット戦闘機でセイバーという通称で呼ばれるのがあってな。 そいつのバリエーションの中に、セイバードッグというのがある。 どうだ、良い名前だろう。 じゃあ、すぐに装着しろ。 時間は無いから、フォーマットとフィッティングは実戦でやれ』 キリコ「……わかった」 箒「キリコ……」 キリコ(これは、兵器。 それ以上でも、それ以下でも無い。 俺の慣れ親しんだあの鉄の棺桶と、なんら変わりはない) 千冬『背中を預けるようにしろ。 遠距離射撃型のISです』 キリコ「……そうか」 山田『ISには絶対防御という機能があって、どんな攻撃からも最低限搭乗者の生命を守れるようになっています。 ですが、それはシールドエネルギーを大量に使うので注意が必要です。 エネルギーが切れたらその時点で負けですからね』 キリコ「……ようは、当たらなければ良いんだな」 山田『そ、それは極論ですけどね……』 千冬『キュービィー、調子はどうだ』 キリコ「悪くは無い」 千冬『……なら、勝ってみせろ。 あんなISスーツとかいうのは、気密性やらが信用ならなくてな」 箒「だ、大丈夫なのか?」 キリコ「問題無い。 それに、この戦闘でコイツでも大丈夫なのか試すのも良いだろう」 箒「……そうか」 キリコ「……じゃあ、俺は行く」 箒「あ、あぁ……勝ってこい」 キリコ「……」 カタパルトに乗せられ、俺は未知の相棒と共に戦いへと赴かんとしていた。 あの棺桶と同じ、硝煙と火炎の臭いを、こいつに感じながら。 ただISに慣れていないというだけで、ヤツの兵士としてのポテンシャルは高い。 だが、あの程度の武装ではあるまい) キリコ「その隙が命取りだ」ガガンッ セシリア「くっ……あれだけ大口を叩いただけはありますわね。 このブルー・ティアーズに初見で真っ向から対峙するとは……」 キリコ「お前はまるで歯ごたえが無いがな。 あいつの言う当たらなければ良いという言葉、そのまんまでなくてはあの機体は勝てんのさ」 山田「何と言うか、真正面過ぎますね……えぇと武装は、実弾系ばかりですね」 千冬「あぁ。 ソリッドシューター、ヘヴィマシンガンが主武装だ。 バルカンと二連装ミサイルも付いている。 後は撹乱用のスモーク弾。 近接戦闘では、殴った相手に腕で圧縮した空気をぶちまけるアーム機構もある。 武装も大概のものと換装可能。 近接から遠距離まで、何でもできる機体だ」 山田「……聞いた限りでは、あれですね……」 千冬「まるでATだ、レーザー武装もしないでな。 相手の死角に素早くビットを回し、シールドエネルギーを削り取る……。 どこかに弱点はある) キリコ「……」キュィイイイッ セシリア「接近戦に持ち込もうという魂胆ですか……見え見えですわ!」シュンッシュンッ キリコ(パージ部を戻した……防御の為か?) セシリア「喰らいなさい!」ズキュゥンッ キリコ「……」ヒュンッ セシリア(距離を詰めようとして戻った……成程、このブルー・ティアーズの弱点を探しているのですね……) キリコ「……」キュィイイイッ セシリア「甘い甘い、甘すぎですわ!」シュンシュンッ キリコ(複雑、故に俺の死角をつける。 俺の死角を注意深く見て、あの複数機を使わねばならない。 そして、あの時のパージ部回収……。 弱点はわかったが、ヤツもそれは重々承知だろう。 ヤツはまだ、見極めているに過ぎんのさ。 38 ID:0J5eGXcx0 山田「じゅ、銃の反動と強引なターンで姿勢を戻した上に避けましたよ! 織斑先生!」 千冬「ブースタンド……姿勢制御と共に、そのまま攻撃に転じれる馬鹿みたいな技術だ。 57 ID:0J5eGXcx0 山田「! こ、これはっ……」 千冬「……ほう」 箒「あ、あれは……」 セシリア「……な、なんですの……一体……」 爆音と煙霧の中、俺の機体は覚醒した。 セイバードッグ。 これが、俺の相棒。 濃淡の入り混じった緑、肩の鎧を血潮のような赤で染める。 両肩に浮き上がるようなその赤。 この機体が目覚めた時、俺もまた息を吹き返したのだ。 また、俺はあの部隊に戻ったのだ。 あの、忌まわしいレッドショルダーに。 49 ID:0J5eGXcx0 『そこまでだ!』 キリコ「……」シュゥウウン…… セシリア「はぁ……はぁ……」 千冬『アリーナ使用時間を過ぎた。 時間による判定とはいささかあれだが……シールドエネルギー残量により、セシリアが勝者だ』 セシリア「わ、私が……」 キリコ「……」 千冬『両者早急に戻れ。 73 ID:0J5eGXcx0 千冬『オルコット』 セシリア「……」 千冬『オルコット、聞こえたか』 セシリア「りょ、りょうかい……」 時間切れによって、俺は試合に負けた。 だが、俺は戦場での己の姿を取り戻していた。 何かを、引き替えにして。 23 ID:0J5eGXcx0 山田「あ、篠ノ之さん……」 千冬「いい。 帰してやってくれ……」 山田「……すみま、せん」 キリコ「……」 千冬「……恐ろしいな、お前は」 キリコ「……」 千冬「人一人斬れば初段の腕、とはよく言ったものだ……お前は、何人葬ってきた」 キリコ「……好きでそうなった訳じゃない……」 千冬「よく言う。 私があそこで止めなかったら、オルコットもどうなっていたか」 キリコ「殺す気は毛頭無い。 37 ID:0J5eGXcx0 山田「え? でもさっきは……」 千冬「アリーナを使用できる時間はまだあったさ。 だが、あれ以上続ける訳にいかなかった」 キリコ「……」 千冬「あのオルコットの怯え様、尋常では無い。 一体何をした」 キリコ「ただ、あいつを睨みつけただけだ」 千冬「それだけか」 キリコ「そうだ」 千冬「……お前は、立派な人殺しになったようだな……」 キリコ「言ったはずだ……好きでなった訳じゃない……」 千冬「お前の意志は関係無い、結果が全てだ……」 キリコ「……」 千冬「……シャワーでも浴びて今日は休め。 結果で負けたとは言え、お前の腕は本物だ。 教官でも勝てるものはそういまい。 41 ID:0J5eGXcx0 千冬「さぁ、もう行け。 片付けがあるのでな」 キリコ「……失礼します」 カツッ カツッ 山田「……よろしかったんですか?」 千冬「……あぁ」 山田「……キリコ君は、一体何者なんですか?」 千冬「ただの、AT乗りだ。 83 ID:0J5eGXcx0 箒「……」 キリコ「……待っていたのか」 箒「あ、あぁ。 鍵を忘れてな。 お前がいないと部屋に入れないのだ」 キリコ「……そうか」 箒「……」 キリコ「……」 箒「……行くか」 キリコ「あぁ」 箒「……」 キリコ「……」 沈黙。 いつもならその程度の事は気にも留めないが、今の俺にとって、何故かこれが苦痛に感じられた。 押し殺された空気、喉をつかずに消える言葉。 隣にいる人間が、まるで逆方向に進んでいるように感じられたのだ。 88 ID:0J5eGXcx0 箒「……」 キリコ「……」 箒「……なぁ」 キリコ「……何だ」 箒「お前のIS、強かったな。 92 ID:0J5eGXcx0 キリコ「……すまなかった」 箒「どうした、急に」 キリコ「俺の機体を見て、不快に思っただろう……」 箒「っ……」 キリコ「……俺も、ああなるのは知らなかったが、悪い事をしたな」 箒「お前が謝る道理がどこにある! あれは、ただ元々そういう彩色の機体だっただけだ!」 キリコ「だが……」 箒「開発者達の当てつけか何かだろう……元AT乗りだから、肩を赤くしてやろうだなんて……」 キリコ「……」 箒「私は、気にしていない……大丈夫だ……」 キリコ「……そうか」 彼女にあの事を言うのは、今は得策では無いだろう。 人の心の機微に疎い俺でも、それくらいはわかった。 俺も、あの痛みがわかる人間なのだから。 00 ID:0J5eGXcx0 キリコ「……」 箒「……」 キリコ「明日からは……」 箒「ん?」 キリコ「明日からは、ISの訓練もしなければならなくなった」 箒「そ、そうだな……」 キリコ「……お前は、放課後という時間、空いているのか」 箒「……えっ?」 キリコ「お前無しでは、訓練出来ない。 13 ID:0J5eGXcx0 キリコ「何度言わせる気だ……俺は、お前が良いと言った」 箒「あ……」 キリコ「……」 箒「……そうか、そうだったな」 キリコ「……」 箒「そこまで言うなら、私が見てやろう。 言っておくが、私は厳しいぞ」 キリコ「軍に比べれば、さして差は無い。 28 ID:0J5eGXcx0 キリコ「……これから」 箒「……え?」 キリコ「これから、よろしく頼む」 箒「……」 キリコ「……」 箒「相変わらず、お前は不器用だな」 キリコ「……お前も、そんな感じがするが」 箒「う、うるさい。 あげ足とるみたいに言うんじゃない……」 キリコ「……」 箒「……ふふっ」 キリコ「……何だ」 箒「何でもない。 ほら、早く部屋に戻ろう。 97 ID:0J5eGXcx0 箒「言っておくが、破廉恥な行為は慎むのだな」 キリコ「……俺の柄じゃない」 箒「色気の無いヤツよ……」 キリコ「……行くぞ」 箒「あぁ」 箒(キリコは、本質は変わっていなかった……薄い、仮面をかぶっていただけ……) 箒(そう、それだけなんだ……) キリコ「……いつまでニヤついているつもりだ」 箒「だ、だれがニヤついてなど!」 キリコ「早く行くぞ。 46 ID:0J5eGXcx0 飼いならすには妖艶の、抱え込むには叫喚の、我に秘めたる内なる獣。 その灯は、暗闇に虫を集う火が如く、耐えがたい衝動と共に何者をも惹き付ける。 そしてまた一人。 獣に惹かれし者が一人、過去を携えやって来る。 役者は集う。 キャストは踊る。 己の何かを内に秘め。 次回、「伏竜」 カーテンコールは、始まらない。 77 ID:CX3KdMev0 ウォッカム「ルスケ、あのゴーレムの調子はどうだ」 ルスケ「はっ……ただ今、篠ノ之博士に調整をさせております。 競技用という枠を超えた、完璧なる兵器に」 ウォッカム「そうか……」 ルスケ「……本当に大丈夫なのでしょうか」 ウォッカム「何がだ」 ルスケ「一機だけならまだしも、まさかゴーレムを三機も投入するなどと……あの機体の性能は、現状のISと一線を画すもので……」 ウォッカム「ルスケ、お前はこの実験の意味がわかっていないな」 ルスケ「……仰る意味が……」 ウォッカム「私が試したいのは、ヤツの腕では無い。 死ぬか、死なないかだ。 69 ID:CX3KdMev0 ウォッカム「その他の下準備はどうなっている」 ルスケ「はい、我々の実働班がクラッキングを既に完了しております。 いつでもシステムを乗っ取ることが可能です」 ウォッカム「そうか……なら、いい」 ルスケ「はっ……」 ウォッカム「それで死ねば、その程度の者だった。 それだけの事だ。 24 ID:CX3KdMev0 「「「キリコ君、クラス代表生おめでとー!」」」 パーンッ パパーンッ キリコ「……何の真似だ」 セシリア「そ、それは……私が辞退したからですわ」 キリコ「……何故だ」 セシリア「お、おほんっ……は、初めて乗った機体で、代表候補生である私をあそこまで追い詰めたのです。 まぁ、試合には私が勝ちましたけれど……。 13 ID:CX3KdMev0 キリコ「……おい」 セシリア「ひっ……」 キリコ「……」 セシリア「あ、あ……えっと、な、何か、ご不満でもありまして?」 キリコ「……お前は、それでいいのか」 セシリア「わ、私ですか?」 キリコ「試合に勝ったのは、お前だ。 お前が出るべきじゃないのか」 セシリア「い、いえ……その、何と申したらいいか……」 キリコ「……」 セシリア「あ、ほ、ほらっ! クラス対抗戦に出ると言う事は、すなわちレベルの高い戦いができるという事。 36 ID:CX3KdMev0 セシリア「あ、あの……な、何か、なりたくない理由でも、あるのでしょうか……」 キリコ「面倒な、だけだ」 「さすが氷の王子……」 「クールだわー」 箒「あのなぁキリコ、せっかく気を利かせて貰ったんだ。 57 ID:CX3KdMev0 箒「……しかし、人気者だな。 キリコ」 キリコ「……らしいな」 箒「……はぁ」 箒(私の事は、思い出そうともしてくれない癖に……あんな、あんな事を言って……) 「お前と、離れてはいけない、と」 箒(あんな事を言って……コイツは、他の人を惹きつけて……) 箒(キリコは、確かに昔も好かれていたな……妙なカリスマ性があった……これは、彼の才能なのだろう……) 箒(誰かに好かれるなんて、良い事じゃないか……キリコは、戦争で疲れ切ったんだ。 97 ID:CX3KdMev0 「はいはーい、新聞部でーす! 目線お願いしまーす!」 キリコ「……」 パシャッ キリコ「……」 パシャッ 「いいねいいねー」 箒「こ、こらキリコ。 少しは笑え」 「あははっ、いいのいいの。 81 ID:CX3KdMev0 「よーし、じゃあセシリアさんとのツーショットもお願いできるかなー」 セシリア「ふ、二人で、ですか?」 「そそー。 イギリス期待の星と、世界初の男性IS乗り。 前途有望な二人の男女。 その先にあるはロマンスかー。 61 ID:CX3KdMev0 セシリア「あっ……」 キリコ「これで良いのか」 「サービス精神ありがとねー! はい撮るよー!」 パシャッ 「はーいサンキュー!」 セシリア「あ、あの、撮った写真は……」 「あははっ、ちゃんとあげるから大丈夫だよー」 セシリア「そ、そうですかっ。 ありがとうございます」 「はーい。 37 ID:CX3KdMev0 「じゃあ、食べよっかー!」 「早い者勝ちですよー!」 セシリア「あ、あぁ! 私が食べようと思っていたものが!」 「速さが足りない!」 「セッちゃん甘い甘いー」 セシリア「だ、誰がセッちゃんですの!」 キリコ「……」 俺は、妙な居心地の良さを覚え始めていた。 誰からも利用される事の無い、何かから身を守る理由も無い。 痛みの無い、この白昼夢のような生活が良いと。 このぬるま湯に、馴染んでしまおうと、そう考え始めていた。 だが、内に獣を呼び戻したのを、俺は忘れていなかった。 自分でも、知らずのうちに巨大になる、あの獣を。 22 ID:CX3KdMev0 セシリア「……」 箒「……お前は」 セシリア「……あら、篠ノ之さん」 箒「奇遇だな」 セシリア「えぇ、そうですわね。 キリコさんは?」 箒「トイレだそうだ。 43 ID:CX3KdMev0 セシリア「あら、先程のパーティで私がキリコさんと握手したのが、お気に障りまして?」 箒「真面目な話だ。 茶化すな」 セシリア「……失礼致しました」 箒「……ヤツの事、どう思う」 セシリア「えっ!? ど、どう思うかと聞かれても……そ、その……」 箒「……怖いか?」 セシリア「……」 箒「……私は、あの試合を見た」 セシリア「そ、そうでしたの……」 箒「あぁ。 キリコが機体をものにした時……あの時のお前は、死神でも見た様だった……」 セシリア「……えぇ。 92 ID:CX3KdMev0 セシリア「……ですが、もう恐怖の印象は、薄れました」 箒「何故」 セシリア「先程、握手をした時……あの方の体温を感じたからです」 箒「それは……当然だろう。 あいつは人間だ」 セシリア「握手をするまで……私には、そうは思えませんでした」 箒「……」 セシリア「あの人の目を、見た事がありますか?」 箒「あるに決まってるだろ」 セシリア「……戦いの中で?」 箒「それは……」 セシリア「私は、見ました……あの時、私は本当に怖かった。 死神というものが本当にいるのだと、あの方が言うように私は知らなかったんだと……。 97 ID:CX3KdMev0 セシリア「あれは、人のできる目じゃありませんでした。 獣でも、殺人鬼でも無い。 もっと、上の何か……私はそう感じました」 箒「……ヤツは、人間だ」 セシリア「……」 箒「あいつは……あいつは、無口で不器用だが、誰よりも優しくて……誰よりも勇敢な男だ。 キリコは……死神でも殺人鬼でもない。 例えボトムズ乗りだったとしても、あいつは最低じゃない!」 セシリア「わかっています……わかっていますわ。 死神が、あんな温かい手をしてるはずは、ありませんもの……」 箒「……」 セシリア「寡黙で、でも時に減らず口を叩くような人ですが……私の手を握る力は、とても優しかった……。 52 ID:CX3KdMev0 セシリア「だから、私は……いえ、これは言い訳なのかも知れません。 私はただ、あの強い雄に、惹かれているだけなのかも……」 箒「……あいつは、妙なカリスマ性があるからな」 セシリア「ふふっ、そうですね」 箒「……お前も、キリコに惹かれたか」 セシリア「貴女も、キリコさんの毒にやられたご様子で……」 箒「あいつは、やらんぞ。 あいつには、私と過ごした時間を思い出して貰わないといけないからな」 セシリア「あら、そういえば幼馴染、というものでしたわね……」 箒「ふっ、まぁな。 あいつとは、小さい頃からの仲だ」 セシリア「それにしては、あまり仲良くは見えませんけど……」 箒「錯覚だろう。 33 ID:CX3KdMev0 箒「……キリコ」 セシリア「キリコさん」 キリコ「箒、また鍵を忘れたのか」 箒「ち、違う。 今は、セシリアと話をしていただけだ」 キリコ「……お前らは、そんな仲が良かったのか」 セシリア「えぇ。 とても有意義な会話をさせて頂きました」 キリコ「……そうか」 箒「……」 セシリア「……」 箒「さ、さぁて、戻るかキリコ」ギュッ セシリア「なっ!?」 キリコ「……手を掴む意味は無いだろう」 箒「い、良いじゃないか。 66 ID:CX3KdMev0 キリコ「あれは、やれと言われたからだ」 セシリア「なっ……キ、キリコさん!?」 箒「ほう……なら私と手を繋げ」 キリコ「……拒否権は」 箒「無い」 セシリア「わ、私も御供しますわ!」 キリコ「お前は部屋が逆方向だろう。 69 ID:CX3KdMev0 セシリア「ほ、本当ですの?」 キリコ「騒がないならな」 セシリア「も、モチロンですわ!」 箒「お、おい……」 キリコ「俺が拒否すれば、どうせ騒ぐのだろう。 面倒は御免だ」 箒「……はぁ。 28 ID:CX3KdMev0 「もうすぐクラス対抗戦だね」 「キリコ君、調子はどう?」 キリコ「……普通だ」 「おっ、余裕ですなー」 「キリコ君の戦う所見てみたいなぁ……」 「キリコ君の機体って射撃主体だよね。 凄いなぁ」 キリコ(……コイツらは、俺に群がって何が楽しいのだろうか……良いヤツらなのは確かだが……) 「あっ、そういえば……」 キリコ「何だ」 「二組の代表生が変わったのって知ってる?」 キリコ「変わった?」 「うん。 この時期に中国から転校生が来たんだってー」 セシリア「ふふっ、私と一戦交えようなんて思って来たのかしら」 キリコ「中国、というのはどこだ」 「あ、そっか。 07 ID:CX3KdMev0 キリコ「……」 「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。 99 ID:CX3KdMev0 鈴「バカキリコ……今までなんで連絡もしなかったのよ!」 セシリア「ちょ、ちょっとアナタ! 何いきなりキリコさんに抱きついてますの!」 鈴「兵隊になるって言って、それっきり音沙汰も無くて……この甲斐性無しの碌でなし! 馬鹿! ウスノロ!」 キリコ「……別に、良いだろう。 それに、最前線ばかりでそんな暇は無かった。 それと、いきなり抱きつくな」 鈴「馬鹿……死んだと思ったじゃない……だから、これくらいいいでしょうが……」 セシリア「キ、キキ、キリコさん!? この方とはどういう関係ですの!?」 キリコ「……メルキアの難民センターで、だいぶ世話になった。 コイツの家族にな」 セシリア「難民センター?」 キリコ「七年前くらい前だ。 難民センターで、コイツの家族が食糧の配給をしていたんだ。 そこで、俺は何故か良く目をかけて貰っていた」 セシリア「そ、そうでしたの……」 鈴「まぁ、ただの中華料理屋だったんだけどね。 家の親が慈善活動で、駆りだされちゃったって訳。 58 ID:CX3KdMev0 箒「おはよう、キリ……コ……」 キリコ「……箒か」 箒「な、なな、ななな、何をしているんだっ!? キ、キリコ!」 鈴「むっ、誰コイツ」 キリコ「篠ノ之箒だ。 この学園で、よく俺の面倒を見て貰っている」 箒「め、面倒……おほんっ、そうだ。 私は篠ノ之箒、キリコと同じ寮部屋でな。 よく一緒にいるのだ」 鈴「はぁっ!? 何ソレ!」 キリコ「偶然部屋が一緒になった。 90 ID:CX3KdMev0 千冬「貴様、誰だ」 鈴「に、二組の転入生です! きょ、教室を間違えました!」 千冬「その割には随分とやかましかったじゃないか、えぇ?」 鈴「す、すみません! すぐに戻ります!」ピューッ 千冬「……はぁ。 知り合いか、キュービィー」 キリコ「……昔の、恩人です」 千冬「ほう、お前にそんな者がいたなんてな。 33 ID:CX3KdMev0 鈴「で、なんでアンタここにいるの?」 キリコ「……軍の、命令だ」 鈴「命令?」 キリコ「ISを偶然動かしたから、ここに異動させられた」 鈴「はぁ? マジで言ってんの? 地球人でも無いし、男だし、ISなんて動かせるわけないじゃん」 セシリア「オホンッ。 動かせるから、キリコさんはここにいるんですのよ? 少し考えたらわかる事でしょう?」 鈴「ふーん、まぁそう言う事か。 というか、本当に兵隊になったんだね……まぁ、相変わらず無口で安心した」 キリコ「……」 鈴「それで、どんな部隊に入ったの?」 キリコ「……さぁな」 鈴「何ソレ、まぁ良いわ。 どうせ長ったらしくてよくわかんないし。 それで、階級は? それくらいなら言えるでしょ」 キリコ「……曹長だ」 鈴「うわ、下士官最高位じゃない。 96 ID:CX3KdMev0 鈴「はぁ……まったく、相変わらず全てに対して無頓着ね……あんたが興味持つ事って何なの? お金? 食べ物?」 キリコ「……干し肉なら、好きだ」 鈴「そ、そうだったんだ……」 箒(わ、私も知らなかった……) セシリア「あら、幼馴染とか言ってらっしゃったのに、そのくらいの事も知りませんでしたの?」 鈴「さ、さっきからうるさいわねアンタ。 あんたはキリコの何なのよ」 セシリア「わ、私!? 私は、その……なんというか……」 キリコ「おい鈴、飯が来ている。 早く取れ」 鈴「あ、ご、ゴメン……」 キリコ「……先に席でも取っていろ」 鈴「えぇー、キリコも一緒に来てよ」 キリコ「早くしろ。 73 ID:CX3KdMev0 鈴「……」 キリコ「……何だ」 鈴「……なんか、やっぱり変わったね、キリコ。 前はさ、困ったような顔しても、笑ってついてきてくれたのに……」 キリコ「……さぁな」 鈴「……席、とってくるね」 キリコ「……」 箒「……彼女は……」 セシリア「え、えっと……キリコさんとあの人は、ど、どんな仲でしたの?」 キリコ「……さっき、言ったはずだが」 セシリア「そうではなくて……もっと個人的な、関係ですわ」 キリコ「個人的?」 箒「ほ、ほら……どっちかがその、す、すす、好きだった、とか……」 キリコ「さぁな。 88 ID:CX3KdMev0 箒「……」 セシリア「……」 キリコ「短い間だったが、それなりには世話になった。 感謝はしている」 セシリア「そ、そうですの……」 箒(私の事は、覚えていなかったのに……やはり、あの時が境になっているのか……) 「はーい日替わりだよ」 キリコ「すまない。 97 ID:CX3KdMev0 セシリア「キ、キリコさーん」 キリコ「……何だ」 セシリア「その……これから、お暇はありますか?」 キリコ「生憎だが、無い」 セシリア「うぐっ……そ、その、何か用事でも……」 キリコ「これから箒とISの訓練をする事になっている」 セシリア「篠ノ之さんと……」 キリコ「だからすまないが、俺はもう行く。 65 ID:CX3KdMev0 セシリア「えぇ、私は専用機持ち。 故に技量、経験共に専用機を持たない方とは雲泥の差。 教えられる事は沢山あると思いますの」 キリコ「……」 セシリア「それに、私はキリコさんと同じ射撃型。 相性もとても良いと思われますわ」 キリコ「……そうか」 セシリア「だから、これからは私と……」 キリコ「すまないが、遠慮しよう」 セシリア「なっ……」 キリコ「訓練は箒とで十分だ。 90 ID:CX3KdMev0 「……どうやら、今までのはこいつの本当の性能じゃなかったらしいな」 セシリア(あの目……) セシリア「……すみません、キリコさん。 私が僭越でした……」 キリコ「……そうか」 セシリア「お時間を取らせてしまい、申し訳ありませんでした」 キリコ「……気にするな。 13 ID:CX3KdMev0 箒「遅い!」 キリコ「……すまない。 少し、用事があってな」 箒「……そうか。 今日の訓練もこれだ、防具はちゃんとつけるように」 キリコ「……おい」 箒「……」 キリコ「箒」 箒「い、言うな……IS使用許可がまだ降りていないんだ。 46 ID:CX3KdMev0 箒「……キリコ」 キリコ「……何だ」 箒「……すまなかった」 キリコ「……何を、謝っている」 箒「その……ISの訓練をしようと言ったのに、できないままで……」 キリコ「……気にするな」 箒「だが……お前も、ISの訓練をしたいだろう? もう代表戦までの日数も……」 キリコ「……どうした。 今日は、幾分弱気だな」 箒「……さっき、セシリアに訓練へ誘われてるのを見た」 キリコ「見ていたのか」 箒「あいつは、専用機持ちだし、すぐにでもIS訓練ができるのに……なんで断ったんだ」 キリコ「……さぁな」 箒「さ、さぁなって……」 キリコ「……自分でも、理由はわからない」 箒「……それって」 キリコ「お前は……よくわからないが、そこまで気を使う必要が無いからな。 俺は一々気を使いたくは無い。 57 ID:CX3KdMev0 箒「はぁ……なんだそれは」 キリコ「それに、お前と訓練したいと言ったのは俺だ。 それくらいの、甲斐性はある」 箒「キリコ……」 キリコ「……使用許可が降りてから、ISの訓練はすればいい」 箒「そ、そうか……」 キリコ「……代表戦が近い、さっさとやるぞ」 箒「……あぁっ! 私と特訓する以上、負けは許さんからな!」 キリコ「……そうか」 箒「よし、準備をするぞ!」 わからない。 コイツに対してだけは、無意識に突き放すことができないでいた。 他人を、信用しきる事ができないまま、ズルズルと他人の温もりを享受し始めていたのだ。 また、利用されるのだと、心の奥底で思いながら。 58 ID:CX3KdMev0 キリコ「……」 キリコ(剣の振り方ばかり上達する……いつか、使う事があるのだろうか……) 「やっほ」 キリコ「……鈴か」 鈴「そっ。 男子は誰もいない時間にロッカー使わないといけないから辛いわねぇ。 というかキリコちゃんってば、剣道の練習なんてしてるんだ」 キリコ「……まぁな」 鈴「……あの、幼馴染の、箒って子と二人でやってるの?」 キリコ「あぁ」 鈴「ふーん……そう」 キリコ「何だ」 鈴「なーんでも。 それより、はい飲み物」 キリコ「すまない」 鈴「良いってこと。 33 ID:CX3KdMev0 キリコ「……」 鈴「な、何よ。 何か言いなさいよ」 キリコ「……」 鈴「……ごめん、アンタに何か言えって言ったあたしが馬鹿だったわ」 キリコ「……相変わらず、減らず口は多いな」 鈴「それはお互い様でしょ? ったく、相変わらず根暗やってんだから」 キリコ「……」 鈴「まっ、前は愛嬌のある根暗だったけど、今は目も当てられない根暗よねアンタ」 キリコ「……」 鈴「ほら、何か悔しかったら言ってみなさいよ」 キリコ「……」 鈴「……軍で、何かあったの」 キリコ「……お前に言っても、意味は無い」 鈴「何よ、それ。 久しぶりにあった友人が悩み聞いてんのに、それが返し?」 キリコ「……お前には、言ってもわからない」 鈴「そもそも、言われてもないのにわかる訳ないわよ。 言葉に出さなきゃ、伝わる事も伝わない。 57 ID:CX3KdMev0 鈴「あっ、ゴメン……キリコ、センターとか放浪してたっけ……」 キリコ「気にしていない」 鈴「……そっ。 で、悩みの種は何よ」 キリコ「……」 鈴「……そんなに言えないものな訳?」 キリコ「……」 鈴「戦場で友達が死んだとか? 味方が裏切ってきたとか? 何度も死にそうになった、とか? 一体何よ」 キリコ「……そんなもの、日常茶飯事だった。 47 ID:CX3KdMev0 鈴「……なんで、こんな変わっちゃったのよ」 キリコ「……」 鈴「こっちもさ、アンタがセンター出た後、前線の支援に行く、いやダメだなんて両親が言い出して……喧嘩してそれから離婚して、地球に帰って……」 キリコ「……」 鈴「戦争に踊らされてさ、バカみたい。 それでこっちに帰って、少しでも自分の意志でなんかやってろうって勉強して、代表候補生になってさ……。 22 ID:CX3KdMev0 鈴「……この約束の意味、わかってる?」 キリコ「……意味?」 鈴「……何でもない。 どうせアンタはこういう事にも興味無いんでしょうから……」 キリコ「……」 鈴「はぁ……まぁいいわ。 今度の代表戦、当たったらコテンパンにしてあげるから、その気でいる事ね」 キリコ「お前も、専用機持ちらしいな」 鈴「ふんっ、まぁね。 47 ID:CX3KdMev0 キリコ「俺は、負けないと言った」 鈴「……ふ、ふーん、何よ。 案外言うじゃない。 初心者の癖に」 キリコ「特訓をしている以上、負ける訳にはいかない。 それだけだ」 鈴「特訓……あのもう一人の幼馴染とかいうのとの約束?」 キリコ「……そんなところだ」 鈴「……アイツ、一体なんなの? 部屋も同じみたいじゃない」 キリコ「……俺も、よく覚えていない」 鈴「その割には、大事そうにしてるじゃない」 キリコ「……さぁな」 鈴「……」 キリコ「……」 鈴「ふんっ、まぁいいわ。 もし勝負で当たったら、賭けしましょうよ」 キリコ「賭け?」 鈴「そっ。 21 ID:CX3KdMev0 キリコ「俺に、メリットが無い」 鈴「い、良いじゃないっ。 あたしを数日使いっパシリとかにしても良いからさ」 キリコ「……良いだろう」 鈴「い、良いんだ……ま、まぁ、こうとなったら、負けないからね。 覚悟しときなさい!」 キリコ「……あぁ」 鈴「ふふんっ、じゃ、あたしは帰るわ。 あんまり体冷やすと風邪になるわよ! じゃあね!」 キリコ「……」 思いだしても、痛みの無い過去。 しかしそれさえも、今の俺の心を大きく動かす要因にはなれない。 他人は、俺を利用しようとする。 それが、俺が戦場で知った事だ。 俺は、いつからこうなったのか。 その問いは、誰にもわからない。 28 ID:CX3KdMev0 ルスケ「篠ノ之。 これより作戦を開始する。 早急に準備をしろ」 束『はいはーい。 でも、本当にキリコちゃん死なないんですよねー』 ウォッカム「それを、お前に試して貰う」 束『えぇー。 キリコちゃんはもう死なないってファイルで結論出たって言ったんだから、良いじゃないですかぁー』 ルスケ「あのファイルは、解読した。 しかし、結果を実際に見なければ確証は得られん」 ウォッカム「安心しろ篠ノ之。 キリコを試すだけだ。 それに、ヤツの活躍する所を、お前も見てみたいだろう。 お前の希望に見合う人物なのかどうか……」 束『十分見合うのは知ってますー。 どうしてもやるんですかー』 ウォッカム「やらなければ、あの作戦は完追しない……」 束『ちぇー、わかりましたやりますよー。 76 ID:CX3KdMev0 ウォッカム「私の興味は、今は異能生存体にしか無い。 ヤツの態度など、仔細ない事だ……」 ルスケ「閣下が、そう仰るなら……」 ウォッカム「異能生存体は、死なないだけでは無い。 機械への適応力、反射速度、治癒速度、それら戦士における資質も常人とはかけ離れている。 しかし、それがどれ程のものなのかは、この目で見なければわからない……故に、今回のゴーレムがいる……」 ウォッカム「ゴーレム機は、人口知能機だ。 動きにパターン傾向があるが、人間の反応速度を上回る機動力を持っている。 09 ID:CX3KdMev0 そして、代表戦当日。 箒にIS使用許可がなんとか降り、期日までの数日はISでの訓練を行えた。 感触は、もう身に着いた。 この兵器は、もう手足と同然だった。 キリコ「一回戦から、鈴とはな……」 山田『あちらのISは甲龍。 近接格闘型のISです』 セシリア「私と戦った時とは勝手が違います。 どうか、ご注意を」 箒「短い期間だったが、私とのIS訓練を思い出せ。 70 ID:CX3KdMev0 戦場とは、運の無い者の死に場所である。 腕の立つ者、味方の血肉を喰らう者、逃げる者、泣き叫ぶ者、その全てがあの爆煙に溶けていった。 そして一人、全てを魅入らせる魔性の者が、己の命をベットする。 さぁ試せ。 コインを投げろ、一天地六の賽の目を、己の運で捻じ曲げろ。 次回、「天賦」 回る目が、赤く淀んだ己を映す。 この前のようにキリコ君が動いてくれれば、きっと勝てますよね」 千冬「……そう言いたいが、近接型との勝手はよくわからないだろう。 どうせ、アイツは見極めている段階なだけだ。 空気を圧縮、それ自体を砲弾として撃ちだす為、目には一切見えないようになっているんです」 千冬「お前のブルー・ティアーズと同じ第三世代型武器だ。 誰かが、時間を稼がねばならない」 鈴「け、けど……」 キリコ「……お前は、どうする」 鈴「あ、あたし?」 キリコ「逃げるなら、今のうちだ」 鈴「に、逃げる訳ないじゃない!」 キリコ「……敵は、競技なんてやりに来た訳じゃない。 ヤツらは、戦争をやりに来た」 鈴「……で、でも」 キリコ「……戦場で、俺はお前を庇う余裕なんてない。 囮に使うかもしれない。 競技とは違う、本物の火薬の臭いを発する敵。 突如訪れた戦場。 あの熱風が、あの敵意が、あの懐かしい感覚が蘇る。 命を懸けた攻防が、この学園という似つかわしくない場所で行われようとしていた。 享受を捨てられる場所で、己に宿したあの獣を、取り戻したあの眼光を、研ぎ澄ませながら。 ゴーレムの調子は」 ルスケ「はっ。 問題無く稼働中です」 ウォッカム「異能生存体は、観測者、周囲の環境にも影響を与えるらしい。 ヤツは、何を変え、何を自分の盾にするのか……」 ルスケ「……閣下が止める可能性もあると?」 ウォッカム「ふんっ、それは今はありえん。 しかし、今後の実験ではあり得るかも知れんな……」 ルスケ「はぁ……」 ウォッカム「それに、体の良い盾もいるようだしな……」 ルスケ「凰鈴音。 うろたえるな」 セシリア「ですがっ!」 千冬「今この状況では何もできん。 この部屋の扉も、ロックされたようだしな」 箒「こ、こんな扉ISで!」 千冬「その扉を壊しても、ピット部まで閉められたのだ。 出るに出れん、無駄な力は使うな」 箒「くっ……」 千冬「……キリコなら、あいつらならやれる。 お前はその龍砲とか言うので削れ」 鈴「ま、的って……」 キリコ「あまり長引くと俺達が不利だ。 一機を重点的に狙い、先に落とす。 四の五の言わずやれ」 鈴「りょ、了解!」 キリコ「やるぞ」カチッ キュィイイッ 鈴「くっ……無茶苦茶よ!」 ギュゥウウンッギュゥウウンッ キリコ(……遮蔽物が無い。 12連装ミサイルで、いぶり出す……) ズババババッ ズガガガガガンッ 鈴「煙から出てきたわ!」 キリコ「左のヤツをロックしろ。 残りの二体はお前を狙わないよう俺がひきつける」 鈴「わかった!」バキュンッ キリコ「……こっちだ」キュィイイッ 『ピピピピッ』 ズガガガガッ キリコ(よし、釣れたか。 だがその後、残った一体に攻撃を加えると釣った二体はどんな攻撃も意に介さず、 一体を攻撃したヤツを狙う」 鈴「うわぁっと!」ヒュンッ キリコ「聞いているか」 鈴「き、聞いてるわよ! で! それじゃあ作戦変更すんの!?」 キリコ「……変更はしない。 しかし、一体だけを狙うと即座にそれを阻止しようとする。 自らが攻撃を受けてもな」 鈴「……それって……」 キリコ「……奴らは、機械かもしれない」 鈴「機械……無人機って事!?」 キリコ「そうだ」 鈴「馬鹿言ってんじゃないわよ! ISは有人機! 常識よ!」 キリコ「そうとは、限らない」 鈴「はっ……兵士の勘とか言うんじゃないわよね!」 キリコ「……」 鈴「……だぁもう、わかったわよ。 そちらの方が、リスクは少ない。 お前はもう眼中に無いようだ」 鈴「ど、どういうこと……」 キリコ「さぁな。 だが、むしろ好都合だ。 一旦そいつを退かせろ」 ルスケ「はっ」 カチッ 『ピピピピッ』ブンッ 鈴「きゃあっ!」バキッ キリコ「鈴っ!」 ウォッカム「……」 ルスケ「障害は、取り除かれました……いかがなされますか」 ウォッカム「構わん、キリコを殺せ。 一旦そいつを退かせろ」 ルスケ「はっ」 カチッ 『ピピピピッ』ブンッ 鈴「きゃあっ!」バキッ キリコ「鈴っ!」 ウォッカム「……」 ルスケ「障害は、取り除かれました……いかがなされますか」 ウォッカム「構わん、キリコを殺せ。 何故ゴーレムは動かん」 ルスケ「そ、それが……ミッションディスクも正常に機能しておりますが……わかりません」 ウォッカム「何だと?」 ルスケ「突然、急停止しました……」 ウォッカム「……ほう」 ルスケ「い、いかがなされますか」 ウォッカム「……篠ノ之博士に連絡を取れ。 なんですかー』 ウォッカム「先日、お前が調整したゴーレムだが、作戦行動中に突然停止した。 どういう事だ」 束『えー、知りませんよー』 ウォッカム「貴様が、コアに細工をしたのか?」 束『まっさかー。 コアなんていじったらそっちにバレちゃうじゃないですかー。 そんな時間なかったですしー』 ウォッカム「ほう……では、どこをいじった」 束『だからー、弾薬の系統をちょちょいとチョロまかして、実弾依存にしたんでーす』 ルスケ「何?」 束『今までのはシールドエネルギーとかでも代替できる便利なヤツでしたけどー、実弾にしたんですよねー。 そろそろ学園の連中が扉をこじ開ける頃だろうからな。 弾切れでは、太刀打ちできん。 だが、こいつを早く手当てしてやってくれ」 セシリア「……ひ、酷い……すぐに救護班をお連れしますわ!」 鈴「ははっ……わか、った……」 キリコ「……」 鈴「……キリ、コ……」 キリコ「……何だ」 鈴「……気に、しないで? ね?」 キリコ「……」 鈴「……それ、だけ……」 キリコ「……鈴」 俺は、久しく忘れていた感情を思い出していた。 悲しみという、人として忘れてはいけない、あの感情を。 俺を庇った小さな少女を、見下ろしながら。 貴様も安静にしていろと言われたはずだ。 大人しく寝ていろ」 箒「織斑先生……」 キリコ「……」 千冬「……気になるか、ソイツが」 キリコ「……」 千冬「……」 セシリア「あ、あの……織斑先生」 千冬「なんだ」 セシリア「あのISは、一体何処の国の物だったのでしょうか……」 千冬「目下調査中だ。 お前らは、そこで寝ている凰の心配でもしていろ」 セシリア「……」 千冬「で、だ。 キリコ、お前に伝えておく事があってな」 キリコ「俺に?」 千冬「あぁ。 お前と凰のISだが、ダメージが酷くてな。 最低一、二週間程修復に時間がかかるようだ。 その間、使用は一切できんから、そのつもりでな」 キリコ「……そうですか」 千冬「凰が起きたら、お前から伝えろ。 では私はこれで失礼する。 敵の方が数が多かったんだし、何よりお前はISの複数戦の訓練を受けてなかった。 だから……」 セシリア「そうですわ、キリコさん……」 キリコ「……」 箒「……キリコ」 キリコ「……席を、外してくれないか」 箒「……」 セシリア「キリコさん……」 キリコ「……」 箒「……わかった。 あの状況で、お前が盾になる必要があった……」 キリコ(俺が、ペールゼンの言う異能生存体だとしたら、俺は攻撃を受けても死ななかったはずだ……。 お前が気を失った後、奴らは突如退き返した。 そして、お前はここに運び込まれた」 鈴「……そう」 キリコ「……」 鈴「……キ、キリコ……」 キリコ「……お前のケガは、お前が思っている以上に酷い。 仲間というものを、信頼というものを、俺は久しく忘れていたのだ。 だが、この健気な少女によって少しだけ、俺の感情は氷解していた。 戦場の霧の隙間から、俺を覗きこむ監視者の目を。 いつまでも付き纏う、あの影のような目を。 全てが真実ではないが、全てが嘘でもない。 他人が己をどう見せるかは、真実でも嘘でもない。 そう見せているものが、己を決めるのだ。 真実を知りたがる者こそ、虚飾に塗れた者と猜疑せよ。 次回、「刺客」 己の存在こそが、ただ一つの真実なり。 実に素晴らしい活躍ですな、ペールゼン殿」 ペールゼン「いえ、この作戦には、私は兵を貸しただけの事。 今回の真の功労者は、情報省でしょう」 「情報省……忌々しい事ですが、確かにそのようですな」 「情報省が作戦に関与した。 終戦も間近ということでしょうな」 「最後に上手い汁を吸うだけ吸って、終戦後の地位を確保しておこうとしているのだ。 全く、卑しい連中よ」 ペールゼン「……私は、これにて失礼します」 カツッ カツッ ペールゼン(終戦も間近……それは軍部が既に感じとっている事だ。 だが、何故ヤツはそんな時期にキリコを抱えようとするか……。 ……言うまでもない。 ヤツは、野心の塊だ。 軍の上層部も、正式に感謝の意を表明するだろう」 ウォッカム「御褒めに預かり、恐悦至極です少将殿」 ペールゼン「だが、私に媚びを売りに来た訳ではあるまい……また、キリコの事かね」 ウォッカム「えぇ……キリコ……彼は実によくやっていますよ。 彼が異能と呼ばれる理由の端を、垣間見せて頂きました」 ペールゼン「……それだけかね? 君のやりそうな事は、私にもわかる。 あれを使う時が来たのだろう」 ウォッカム「あれ、ですか……さすがに、研究を成した御本人は御察しが良い……。 勿論、使わせて頂きますよ」 ペールゼン「……やめておけ。 あれも、失敗作に過ぎん」 ウォッカム「何故貴方はそうまでして否定するのか、わかりかねますな。 人工的な異能生存体、その多角的アプローチは、 実に素晴らしいものであるというのに……」 ペールゼン「実験した私が、失敗と言っているのだ。 そんなこともわからんのか……」 ペールゼン(異能生存体のみの部隊……確かに、私は構想した。 しかし、今はそんなものを考えていた昔の私が恐ろしい) ペールゼン「生命は、死なねばならぬ。 さっさと寝ろ病人」 セシリア「えぇ。 これでまた大事に至ったら大変ですもの。 キリコがそう言ったの?」 箒「見ればわかるだろう。 あいつは戦争で疲れきっているんだ。 私だって、あいつが不快にならないように必要最低限だけ接しているのに……」 鈴「……はぁ」 箒「な、なんだ。 何の溜息だそれは」 鈴「あんたさぁ……あいつより根暗なんじゃないの?」 箒「なっ……ど、どういう意味だ!」 鈴「戦争で疲れただかなんだか知らないけどさ、今ここじゃ戦争やってない訳じゃない。 いつまでも自分の過去を、あいつに押しつけるんじゃないわよ、ってずっと言いたかったの」 箒「お、押しつけてなど!」 鈴「だったら今のキリコを見てやんなさいよ。 それが嫌なら、もっとあいつにお節介焼いて、人格変えるくらいの努力しなさいよ。 そのどっちもできない癖に、キリコの事知った風な口聞いてると、ブッ飛ばすわよ」 箒「っ……」 鈴「はぁ……なんであたしが説教なんか……まぁいいわ。 話をするのは、ISの特訓に出掛ける時や、就寝時くらいだ) 箒(……キリコを、変える、か) 箒(……私に、出来るのだろうか……キリコを一度、あんな風にした私が……) 「やめろっ!」 箒「っ……」 箒(いや、やるしかない……やるしかないんだ。 そんな銃なんて……」 キリコ「……今のような、ISがあっても使えない状況もある」 箒「そ、そうだったな……まだお前のISは回復していなかったんだったな……」 キリコ「……」 箒「……」 キリコ「……少し、良いか」 箒「な、なんだ? なんでも聞くと良い」 キリコ「……気を遣わないでくれると、ありがたい」 箒「……な、何?」 キリコ「俺に対して、気を遣う必要は無い。 だが、気を遣うな、とは……」 キリコ「……前に、過去の事は話すな、と言ったな」 箒「……あぁ、そうだ」 キリコ「……あれは、過去の事を話さなければ、別に俺はお前を嫌いになったり、どうこうしたりする気は無いというつもりで言った」 箒「そ、それは、つまり……」 キリコ「……他の奴ら同様、お前も俺に好き勝手絡むと良い。 お二人にニュースを持って来ましたよ」 箒「ニュ、ニュース、ですか?(こ、こんな時に……)」 山田「お引っ越しです!」 箒「はい?」 キリコ「……」 山田「部屋の調整がついたんです。 篠ノ之さんは、別の部屋に移動です」 箒「ちょ、ちょっと待って下さい! 今更部屋を変えろだなんて……」 山田「年頃の男女が同室だなんて、駄目ですよ。 だが、出ていきたいなら、出ていくと良い。 移動先の部屋はどこですか」 山田「え? あ、えっと、ここの真逆の所ですけど……」 箒「……すぐに移動します。 変な事を言って、すみませんでした」 山田「い、いえ。 大丈夫ですよ。 移動先の子にも話はつけてあるので、今から荷物を運んでも大丈夫ですよ」 箒「……わかりました」 山田「あ、それと、キリコ君。 ノックしたら、入れ、じゃなくて、どうぞって言わないとダメですよ」 キリコ「……了解」 箒「……今まで、苦労をかけたな」 キリコ「……気にするな」 山田「じゃあ行きましょうか」 箒「……カードキーは、ここに置いておく。 こんな人間の、どこが良いんだ」 箒「そ、それは……」 キリコ「……」 箒「それは、違う……お前は、今だって人に興味が無いようにする癖に、他人の心配をしてくれたりする、優しい所もあるじゃないか」 キリコ「……俺が?」 箒「あぁ。 さっきだって、私に気を遣うなと言ってくれた……あれはきっと、お前なりの優しさなんだ。 そういう、不器用だが優しい所が……私は好きだ。 なら、優勝してみせろ。 そうすれば、俺はお前の恋人にでも、何にでもなろう」 箒「ほ、本当か!?」 キリコ「……あぁ」 箒「そ、そうか……」 キリコ「……俺が優勝した場合は、どうすればいいんだ」 箒「し、知るか! 自分で考えろ!」 キリコ「……そうか」 箒「そうだ!」 キリコ「……」 箒「く、首を洗って待っておくのだな! 絶対に優勝してやる!」 キリコ「……消灯時間が近い。 食事くらいなら、別に良い」 箒「そ、そうか……良かった……」 キリコ「……そろそろ、見回りが始まる時間だ。 彼女の行動では無い。 自分の返事が、自分の予想しないものだったからだ。 恋人などという浮ついたものを、想像すらできないでいるのに、易々と返事をしてしまった。 普通では考えられない事だった。 だが、断るという選択肢も、今の俺には考えられなかった。 あの篠ノ之箒の頼みを。 何故だかはわからない。 彼女の記憶も、俺は思いだしていない。 だが、本能的に、彼女を傷つけてはいけないと、そう思ってしまった。 ……俺は、少しだけだが、変わったようだ。 今度は違うの」 「今度の個人別学年トーナメントで優勝すると、キリコ君と付き合えるんだって!」 「えぇ!? それ本当?」 「本当だって。 そう聞いたもん」 「へぇー……でも、キリコ君と恋人かぁ……」 「キリコ君って、ああ見えても恋人にはすっごく情熱的に接してくれそうだよねぇ」 「わかるわかる! 二人の時だけは笑ってくれたり、後ろからそっと抱きしめて、愛してる……みたいな!」 「大人な恋愛だねー……」 「良いなーそれー……ちょっと燃えてきたわ!」 「あ、やる気だねー。 フランスから来ました。 皆さん、どうかよろしくお願いします」ニコッ 「お、男?」 シャル「はい。 各人すぐに着替え、第二グラウンドに集合だ。 それから、キュービィー」 キリコ「……はい」 千冬「お前は、デュノアの面倒を見ろ。 同じ男子同士だ。 俺の顔に、何か付いているのか」 シャル「あっ、ううん、何でも……僕シャルル、これからよろしくね」 キリコ「……あぁ。 早速だが、ロッカーに行くぞ。 教室は女子の着替え場所だ」 シャル「あ、そ、そっか。 なるべく早く慣れてくれ」 シャル「う、うん……わかった」 キリコ「……」 シャル「……」 キリコ「……なんだか、落ちつかない様子だが、どうした」 シャル「う、ううん。 来て早々迷惑かけちゃって」 キリコ「気にするな。 男な分、お前といる方がまだ気がマシだ」 シャル「そ、そう……」 キリコ「……」 シャル「あ、そういえば、ちゃんと自己紹介してなかったね。 僕はシャルル・デュノア、シャルルって呼んで」 キリコ「……キリコ・キュービィーだ。 好きなように呼べ」 シャル「じゃあキリコって呼ぶね、よろしくキリコ」 キリコ「……あぁ、よろしく頼む」 シャル「うん」 キリコ「……時間だ。 あの教員は、口うるさ……」 シャル「……な、なにかな?」 キリコ「……着替えるのが、随分早いな」 シャル「そ、そうかな? あはは……」 キリコ「……お前は、ISスーツを着るのか」 シャル「ISスーツを着るのかって……それが普通じゃない?」 キリコ「……そうか」バサッ シャル「……その赤い服、何?」 キリコ「……耐圧服だ」 シャル「……そ、それでIS操れるの?」 キリコ「……あぁ。 俺の専用機は壊れているが、訓練機もこれで動かせる。 デュノア社製のオリジナルなんだ」 キリコ「……お前のファミリーネームと同じだな」 シャル「父が社長をしてるんだ。 一応、フランスで一番大きいIS関係の企業だと思う」 キリコ「(フランス? 国か)……御曹司か」 シャル「ま、まぁ、そんな感じ、なのかな……」 キリコ「……羨ましいな」 シャル「え?」 キリコ「気品もあり、人との接し方に厭らしさが無い。 僕は、そう思うよ。 寡黙で、職人気質って感じで、カッコいいと思う」 キリコ「……そうか」 シャル「……」 キリコ「……よし、着替え終わった。 お前の分も私が作ってある、遠慮せず食べろ」 セシリア「私も同じでしてよ。 我がイギリスの代表として、おいしい料理を是非キリコさんにごちそうしようと思いまして、朝早く起きて作ってきましたの」 鈴「あたしだってキリコの分くらい作ってきたわよ。 あ、シャルルも食べるよね?」 シャル「え? 良いの?」 鈴「良いの良いの。 キリコ君、元兵士だって聞いたし、それくらい入るでしょ」 キリコ「……あぁ」 箒「む……まぁ、キリコがそう言うのなら、仕方あるまい」 セシリア「ですわね」 鈴「シャルルは空気読めるわねぇ。 セシリアの出身地は碌な料理が無い事で有名だから」 セシリア「な、何を吹き込んでますの!」 鈴「良いじゃない。 用心に越した事ないわよ、ねぇキリコ。 兵士は事前に相手の情報を知っておくものよねぇ」 キリコ「……あぁ」 セシリア「鈴さん!」 鈴「はーいはい。 これは、あまり良い物じゃない」 セシリア「そ……そう、ですか……」 キリコ「……気にするな。 ほら、シャルルも食べて良いわよ」 シャル「わぁ、ありがとう鈴さん」 鈴「さんなんてつけなくていいわよ、面倒だし。 そういうのって、日本じゃあーんって言うんでしょ? 親しいカップルなんかがやるんだって」 鈴「そ、そうよ! 別にあんたらカップルでもなんでもないじゃない! やることないわよキリコ!」 キリコ「……何でも良いから食べさせてくれないか。 キリコがこう言っているんだ。 じゃ、じゃあ、行くぞキリコ」 キリコ「あぁ」 箒「よ、よし……」プルプル シャル(手が震えてる……) キリコ「……」 箒「な、何をしている。 とても、優しい微笑みでした」 キリコ「……妙な、感想だが……本当か?」 シャル「うん。 まだあるからな、食べると良い」 鈴「あたしにも食べさせなさいよ。 キリコちゃんが笑う程の料理なんて、よっぽどなんでしょうから」 セシリア「わ、私もですわ!」 箒「お、おい! お前達が食べたらキリコが食べる分が無くなってしまうだろ!」 鈴「良いじゃない、よこしなさいよ」 セシリア「そうですわ!」 箒「こ、こら!」 キリコ「……」 集団の中にいる心地よさ。 こんなものを感じたのは何時以来か。 友と団欒を囲み、嫌な事を一切考えなくて良い、あの掛け替えの無いとまで言われる時間を。 俺は享受していた。 自らが、赤の騎兵であるという事を忘却して。 調査の方はどうだ」 山田「はい……やはり、何者かのハッキングを受けたようです。 あの時扉が開かなかったのも、そのせいかと」 千冬「……そうか」 山田「手掛かりは何も残っていませんでした……かなりの凄腕ですね」 千冬「だろうな。 68 ID:RlWvXdbI0 キリコ「ここが、朝に使ったアリーナロッカーだ……俺達は基本、ここで着替える事になる。 どうだ、もう施設の説明は良いか」 シャル「うん、ごめんね。 11 ID:RlWvXdbI0 キリコ「なんだ」 シャル「えっと……剣道の時もその赤い服着てるの?」 キリコ「あぁ」 シャル「な、なんで?」 キリコ「あの道着とかいうのが、俺のサイズが無くてな。 女性用しか無かったから、仕方が無いが。 55 ID:RlWvXdbI0 シャル「ガ、ガチだね……まさに戦場の兵士さんだよ……」 キリコ「……褒められたものじゃないがな」 シャル「へぇ……ねぇ、キリコ」 キリコ「なんだ」 シャル「ちょっと、持ってみてもいい?」 キリコ「……」 シャル「あっ、その……IS以外で武器持つ事なんてあまりないから、持ってみたいなぁ……だなんて」 キリコ「……」 シャル「ご、ゴメンね。 まだ今日あったばかりなのに、図々しいよね」 キリコ「……」スッ シャル「……え?」 キリコ「触りたいなら、触れば良い」 シャル「ほ、本当? わぁ、ありがとう……って、重い……」 キリコ「……ATの装甲を破れると謳った銃だからな」 シャル「で、デザートイーグルより二回り以上大きいよこれ……」 キリコ「……デザート?」 シャル「あ、ゴメン。 53 ID:RlWvXdbI0 シャル「ど、どう? カッコ良かった?」 キリコ「……そうだな」 シャル「えへへ……」 キリコ「……」 シャル「でも、良かったなぁ……キリコが良い人で」 キリコ「俺が?」 シャル「うん……キリコを最初見た時はムスッとした顔だったから、ちょっと怖いなぁなんて思ったけど……。 80 ID:RlWvXdbI0 キリコ「……」 シャル「ふふっ……そっか、キリコと僕は、友達で良いんだね」 キリコ「……好きにすればいい」 シャル「じゃあ友達だ。 49 ID:RlWvXdbI0 シャル(誰かの足音? しかも、大勢……) キリコ「……何者かから、銃撃を受けたようだ」 シャル「……だ、誰から?」 キリコ「……先に、銃を返せ」 シャル「あっ……う、うん……はい」 キリコ「……」カチャッ シャル「……」 キリコ「……敵は、十人は軽いといったところか」 シャル「一体、誰なんだろう」 キリコ「さぁな……だが、命を狙われているのは確かだ。 銃にもサプレッサーをつけている。 本気らしいな」 シャル「な、なんでこんなIS学園なんかに直接……」 キリコ「この前も、襲撃を受けた。 65 ID:RlWvXdbI0 「目標が逃走中。 ロッカールームを右へ出た。 早急に道を塞げ」 キリコ「……」タタタッ シャル「はぁ、はぁ……」タタタッ 俺以外に現れた男のISパイロット。 そして、奇襲部隊。 そいつらは、偽りの平穏をいとも容易く破り、俺はまた戦場に引き戻されていた。 どこへ行っても地獄。 俺は、平穏に慣れる事すら、できないでいた。 平穏を、絹を切り裂くが如く蹂躙し、その音に狂喜する。 狂喜はやがて底に沈み、グラスを通る光を冷たく濁らせる。 だがこの男は違う。 遺伝確立250億分の1。 死なない兵士。 異能生存体。 グラスの水を飲み干してもなお、渇きを埋めんと贄を欲す。 次回、「凶器」 しかし、死神でさえ孤独とは限らない。

次の

恋愛初期にわかる!彼が本気か遊びか見極める言動

遊び じゃ ない あれ は デート 俺 は そう 思っ て た けど

小袋成彬さんが2020年3月13日放送のの中でONE OK ROCKのTakaさんのスタジオに遊びに行った話をしていました。 Meanwhile, and are back to the studio with producers. Start of the next album production? 👀 📷jamiecarterfilms — ONE OK ROCK WORLD oneokrockworld (小袋成彬)この前で、ワンオクのTakaさんに会ったんですよ。 いろんなご縁がきっかけで、スタジオに遊びに行く機会があって。 2日ぐらいでお邪魔したんですよ。 僕が一緒にセッションしたってわけじゃないんですけど。 もちろんONE OK ROCK、僕の妹がファンでね。 で、ギターのToruさんとは僕、1回だけ飲んだことがある。 ただ、お互い酔っ払ってて覚えてなかったんだけど。 まあ、そんなこんなでちょっとごあいさつする機会があって、見学してて。 いろんな作り方とか、「こういう人たちとこういうグルーヴで作るんだ」っていうを学べていい機会だったんですけど。 なんかね、コーラスで曲にね、ちょっとガヤ的なのでね。 大きなスタジオでみんな叫ぶみたいな。 拍手を録るとかね、そういうのにちょっと参加してみたんですよ。 それで僕、普段全然ONE OK ROCKは聞かないし、曲もちょっとしか知らないんだけど、その作ってる曲をみんなで歌った時にね、何か力がすっげえ湧いてくるんですよ。 一番食らったのは、そのTakaさんご本人のキャラクターがやっぱりすごくて。 なんだろうね。 一言で言ってしまえば、週刊少年ジャンプの主人公みたいな人だった。 なんか目がキラキラしていて、「そういうの、言っちゃよくないよね?」とか。 なんて言うんだろう? 人類が行くべき正しい方向をしっかり、なんの迷いもなく提示してくれる感じが「主人公みたい!」って思って。 結構圧倒されたんですよ。 で、俺があれをできるか?って言ったらできないし。 それでTakaさんも僕のこのなんか偏屈なね、感じって絶対にできないじゃないですか。 それで俺、その時に思ったんですよ。 「ああ、役割が違う」と思って。 同じ音楽をやってるんだけど、あの人たちはバンドであの音を鳴らして。 あのキャラクターを持って人々を鼓舞するわけじゃないですか。 「じゃあ、俺の役割ってなんなんだろう?」ってすごい思ったんですよ。 海外に来て、自分の好きなものだけずっと作ってる人生もいいけど、この社会においてね、立ち止って今、機能がストップしてる社会をもう1回見て。 「俺に何ができるんだろう?」とか「俺の役割って何だろう?」ってずっとね、この3週間ぐらい考えてたんです。

次の

#4 元カレ

遊び じゃ ない あれ は デート 俺 は そう 思っ て た けど

1:「これってデート?」って聞いても良い? ふたりきりで食事に行ったとき、「これってデートなのかなぁ?」とひとりで悩み続けているのってちょっと疲れてしまいますよね。 こんなふうに、直接的に「これってデートなんですか?」と聞くよりも、「自分はデートのつもりで楽しんでいる」ということをさりげなく伝えてみるのがいいのかもしれません。 2:どこからデートかわからない……デートと遊びの違い7つ この章では、みなさんが1度は悩んだことがあるであろう、「どこからがデートなの?」という悩みを解決すべく、デートと遊びの違いについて、男性たちに話を聞いてみました。 (1)1回目だけなら遊びの可能性あり 「僕の場合は、1回くらいならお試しも兼ねて、女性を食事に誘ったりすることはありますね。 ただ、その1回で恋愛対象じゃないなって感じたら、勘違いさせるのも悪い気がするので、2回目は誘いません。 でも、遊びだったらキッチリしたいので、割り勘もキッチリしちゃうかな。 さすがに1円単位とまでは言わないですけど、100円単位では割り勘にします。 男として見られたいかそうでないかによって、そこら辺は結構変わると思いますよ」(Eさん/26歳) (3)おしゃべりの時間が長いならデート 「なかなか難しい問題ですけど、女性って特に用事がなくても、おしゃべりだけで数時間とか平気で過ごすじゃないですか? でも男にとって、友達とか遊び相手の女性の話をそこまで長く聞き続けるのって結構ストレスだと思うんです。 僕だったら、1時間半が限度かな。 でも、ただの友だちだったら、めんどうなんじゃないかなって。 まぁ、すごく家が近いとか、目的地の途中に女性の家があるとかなら別ですけど。 それでも行きも帰りも文句言わずに車を出してくれるのは、デートに近いと思います」(Uさん/28歳) (5)女扱いするかどうか 「デートかどうかっていうより、その人の前での態度が重要だと思います。 相手を女扱いするか、友達として同性と同じ扱いをするかで分かるんじゃないですか? 俺は、付き合いたい女と、友達でいたい女は別。 なので、そこら辺は結構かっちり分けているつもりです。 中途半端な態度で接して、誤解させるのは良くないと思うし。 告白されてから断って、せっかくいい友達だったのに、気まずくなるのも嫌ですし」(Aさん/29歳) (6)どっちが行きたい場所に行くか 「うーん、彼女にしたかったら、相手が行きたいって言った場所に行きますし、友だちだったら、遠慮なく自分が行きたい場所に連れていきますね。 もちろん相手が嫌がったら行かないですけど、遊びならお互いに行きたい場所が一緒じゃないなら、そもそも一緒に行かなくてもいいんじゃない?ってなるので。 でも、本気で落としたいなら、自分が全然興味なくても、相手が行きたいって場所には行ってみて、どんなものが好きなのかとか知りたいですし」(Mさん/30歳) (7)スマホの扱いが違う 「遊びの相手と一緒にいるときなら、普段通りスマホ触りながらしゃべったりしますけど、好きな相手が目の前にいたら、そんなことできないでしょう。 だから、スマホは相手がトイレに行ってるときとかだけチェックするようにしますね。 あと違う点って言ったら、少しでも近くにいたいかどうか、じゃないですか? 好きだったら、できれば1回目でもデートだってわかってもらえるように、手とか握りたくなりますし」(Kさん/26歳) 3:相手のひとつひとつの行動を見逃さないで! 男性たちにとって、「これがあれば絶対にデート!」という決定的なものはなさそうです。 人によって、好きな相手の場合は態度に出るという人もいますが、そんな気持ちを隠すのがうまい男性だっています。 とはいえ、何かしら、遊びなのかデートなのかの判断に使えるような行動は出てくるはず。 相手の様子をしっかりと見て、ときには「デートみたいでいいね」などと、カマをかけてみてはいかがでしょうか? この記事を書いたライター 大山奏 K. Ohyama スピリチュアルと運動が好きなアウトドア系ライター。 整体師、カラーセラピスト、アロマテラピーインストラクター。

次の