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全国郵便局名録 (鳴美): 2008|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

あざ いなか しょうが っ こう

蕎麦 ( そば )は二銭さがっても、このせち辛さは、明日の糧を思って、 真面目 ( まじめ )にお念仏でも唱えるなら格別、「蛸とくあのく鱈。 」などと愚にもつかない 駄洒落 ( だじゃれ )を 弄 ( もてあそ )ぶ、と、こごとが出そうであるが、本篇に必要で、酢にするように切離せないのだから、しばらく御海容を願いたい。 とぼけていて、ちょっと 愛嬌 ( あいきょう )のあるものです。 ほんの一番だけ、あつきあい下さいませんか。 」 こう、つれに誘われて、それからの話である。 「蛸とくあのくたら。 」しかり、これだけに対しても、三百三もんがほどの 価値 ( ねうち )をお認めになって、 口惜 ( くやし )い事はあるまいと思う。 つれは、毛利 一樹 ( いちじゅ )、という 画工 ( えかき )さんで、多分、 挿画家 ( そうがか )協会会員の中に、芳名が 列 ( つらな )っていようと思う。 が、 憚 ( はばか )りながらそうではない。 我ながらちょっとしおらしいほどに思う。 かつて少年の頃、師家の玄関番をしていた折から、美しいその令夫人のおともをして、某子爵家の、前記のあたりの別荘に、栗を拾いに来た。 拾う栗だから申すまでもなく 毬 ( いが )のままのが多い。 別荘番の貸してくれた鎌で、山がかりに出来た庭裏の、まあ、谷間で。 御存じでもあろうが、あれは 爪先 ( つまさき )で 刺々 ( とげとげ )を軽く 圧 ( おさ )えて、 柄 ( え )を 手許 ( てもと )へ引いて 掻 ( か )く。 ……不器用でも、これは書生の方がうまかった。 令夫人は、 駒下駄 ( こまげた )で圧えても転げるから、 褄 ( つま )をすんなりと、白い足袋はだし、それでも、がさがさと針を 揺 ( ゆす )り、歯を 剥 ( む )いて 刎 ( は )ねるから、憎らしい……と足袋もとって、雪を 錬 ( ね )りものにしたような素足で、 裳 ( もすそ )をしなやかに、 毬栗 ( いがぐり )を挟んでも、ただすんなりとして、露に褄もこぼれなかった。 これだと、どうも、そのまま浮世絵に任せたがよさそうに思われない事もない。 が、そうすると、さもしいようだが、作者の方が飯にならぬ。 そッとして置く。 もっとも三十年も以前の思出である。 もとより別荘などは影もなくなった。 が、狸穴、我善坊の辺だけに、引潮のあとの 海松 ( みる )に似て、樹林は土地の隅々に残っている。 餅屋が構図を飲込んで、スケッチブックを懐に納めたから、ざっと用済みの処、そちこち日暮だ。 ……大和田は程遠し、ちと 驕 ( おご )りになる……見得を云うまい、これがいい、これがいい。 長坂の 更科 ( さらしな )で。 我が一樹も可なり 飲 ( い )ける、二人で四五本傾けた。 時は 盂蘭盆 ( うらぼん )にかかって、下町では草市が立っていよう。 もののあわれどころより、雲を掻裂きたいほど蒸暑かったが、何年にも通った事のない、十番でも切ろうかと、曾我ではなけれど気が合って 歩行 ( ある )き出した。 坂を下りて、一度ぐっと低くなる 窪地 ( くぼち )で、途中街燈の光が途絶えて、鯨が寝たような黒い道があった。 鳥居坂の 崖下 ( がけした )から、 日 ( ひ )ヶ窪の辺らしい。 一所 ( ひとところ )、板塀の曲角に、白い 蝙蝠 ( こうもり )が 拡 ( ひろが )ったように、 比羅 ( びら )が一枚 貼 ( は )ってあった。 時間もよし、この横へ入った処らしゅうございますから。 」 すぐ角を曲るように、樹の枝も指せば、おぼろげな番組の末に 箭 ( や )の標示がしてあった。 古典な能の狂言も、社会に、 尖端 ( せんたん )の 簇 ( やじり )を飛ばすらしい。 けれども、五十歩にたりぬ向うの辻の柳も射ない。 これもまた……面白い。 「おともしましょう、望む処です。 」 気競 ( きお )って言うまで、私はいい心持に酔っていた。 「通りがかりのものです。 ……臨時に見物をしたいと存じますのですが。 」 「望む所でございます。 」 と、式台正面を横に、 卓子 ( テエブル )を控えた、受附世話方の四十年配の男の、紋附の 帷子 ( かたびら )で、 舞袴 ( まいばかま )を 穿 ( は )いたのが、さも歓迎の意を表するらしく 気競 ( きお )って言った。 これは私たちのように、 酒気 ( さけけ )があったのでは決してない。 切符は五十銭である。 第一、順と見えて、六十を越えたろう、 白髪 ( しらが )のお 媼 ( ばあ )さんが 下足 ( げた )を預るのに、二人分に、 洋杖 ( ステッキ )と蝙蝠傘を添えて、これが無料で、 蝦蟇口 ( がまぐち )を 捻 ( ひね )った一樹の心づけに、手も触れない。 卓子 ( テエブル )を並べて、謡本少々と、扇子が並べてあったから、ほんの松の葉の寸志と見え、一樹が宝生雲の空色なのを譲りうけて、その一本を私に渡し、 「いかが。 」 「これも望む処です。 」 つい私は 莞爾 ( にっこり )した。 扇子店 ( おうぎみせ )の真上の 鴨居 ( かもい )に、当夜の番組が 大字 ( だいじ )で出ている。 私が一わたり読み取ったのは、 唯今 ( ただいま )の塀下ではない、ここでの事である。 合せて五番。 必要なのだけを言おう。 道の事はよくは知らない。 しかし鷺の姿は、近ごろ狂言の 流 ( ながれ )に影は映らぬと聞いている。 古い隠居か。 むかしものの 物好 ( ものずき )で、 稽古 ( けいこ )を積んだ巧者が居て、その人たち、言わば素人の催しであろうも知れない。 狸穴近所には 相応 ( ふさわ )しい。 が、私のいうのは流儀の事ではない。 曲である。 あたかも一樹が、扇子のせめを切りながら、片手の指のさきで軽く乳のあたりと思う胸をさすって、返す指で、左の目を 圧 ( おさ )えたのを見るにつけても。 …… 一樹を知ったほどのもので、 画工 ( えかき )さんの、この癖を認めないものはなかろう。 ちょいと内証で、人に知らせないように 遣 ( や )る、この 早業 ( はやわざ )は、しかしながら、礼拝と、愛撫と、謙譲と、しかも 自恃 ( ほこり )をかね、色を沈静にし、目を清澄にして、胸に、一種深き人格を秘したる、珠玉を 偲 ( しの )ばせる 表顕 ( ひょうげん )であった。 声が玄関までよく通って、その間に見物の 笑声 ( わらいごえ )が、どッと響いた。 「さあ、こちらへどうぞ、」 「 憚 ( はばか )り様。 」 階子段 ( はしごだん )は広い。 」 挨拶 ( あいさつ )するのに、段を 覗込 ( のぞきこ )んだ。 その頭と、下から出かかった頭が二つ……妙に並んだ形が、早や横正面に舞台の松と、橋がかりの一二三の松が、人波をすかして、揺れるように近々と見えるので……ややその松の中へ、次の番組の茸が土を 擡 ( もた )げたようで、余程おかしい。 ……いや、 高砂 ( たかさご )の浦の想われるのに対しては、むしろ、むくむくとした松露であろう。 ……思え、講釈だと、水戸黄門が竜神の 白頭 ( しろがしら )、 床几 ( しょうぎ )にかかり、 奸賊 ( かんぞく )紋太夫を抜打に切って棄てる場所に…… 伏屋 ( ふせや )の建具の見えたのは、どうやら 寂 ( さ )びた貸席か、出来合の倶楽部などを仮に使った興行らしい。 見た処、大広間、六七十畳、舞台を二十畳ばかりとして、見物は一杯とまではない、が 賑 ( にぎやか )であった。 この暑さに、五つ紋の羽織も脱がない、行儀の正しいのもあれば、浴衣で腕まくりをしたのも居る。 印半纏 ( しるしばんてん )さえも入れごみで、席に 劃 ( しきり )はなかったのである。 で、 階子 ( はしご )の欄干際を縫って、案内した世話方が、 「あすこが透いております。 ……どうぞ。 」 と云った。 脇正面、橋がかりの松の前に、肩膝を透いて、 毛氈 ( もうせん )の 緋 ( ひ )が流れる。 色紙、短冊でも並びそうな、おさらいや場末の 寄席 ( よせ )気分とは、さすが 品 ( しな )の違った座をすすめてくれたが、裾模様、背広連が、多くその席を占めて、切髪の後室も二人ばかり、白襟で控えて、 金泥 ( きんでい )、銀地の舞扇まで開いている。 われら式、……いや、もうここで結構と、すぐその欄干に 附着 ( くッつ )いた板敷へ席を取ると、 更紗 ( さらさ )の 座蒲団 ( ざぶとん )を、両人に当てがって、 「 涼 ( すずし )い事はこの辺が一等でして。 」 と世話方は階子を下りた。 が、ひどく蒸暑い。 「御免を被って。 」 「さあ、脱ぎましょう。 」 と、こくめいに畳んで持った、 手拭 ( てぬぐい )で汗を 拭 ( ふ )いた一樹が、羽織を脱いで 引 ( ひっ )くるめた。 ……羽織は、まだしも、世の中一般に、頭に 被 ( かぶ )るものと 極 ( きま )った 麦藁 ( むぎわら )の、安値なのではあるが夏帽子を、居かわり立直る客が 蹴散 ( けち )らし、 踏挫 ( ふみひし )ぎそうにする…… また幕間で、人の 起居 ( たちい )は忙しくなるし、あいにく 通筋 ( とおりすじ )の板敷に席を取ったのだから 堪 ( たま )らない。 膝の上にのせれば、 跨 ( また )ぐ。 敷居に置けば、蹴る、脇へずらせば踏もうとする。 「ちょッ。 」 一樹の 囁 ( ささや )く処によれば、こうした能狂言の客の不作法さは、場所にはよろうが、芝居にも、映画場にも、場末の寄席にも比較しようがないほどで。 男も女も、立てば、 座 ( すわ )ったものを 下人 ( げにん )と心得る、すなわち 頤 ( あご )の下に人間はない気なのだそうである。 中にも、こども服のノーテイ少女、モダン仕立ノーテイ少年の、 跋扈跳梁 ( ばっこちょうりょう )は 夥多 ( おびただ )しい。 …… おなじ少年が、しばらくの間に、一度は膝を 跨 ( また )ぎ、一度は脇腹を小突き、三度目には腰を蹴つけた。 目まぐろしく 湯呑所 ( ゆのみじょ )へ通ったのである。 一樹が、あの、指を胸につけ、その指で、左の目をおさえたと思うと、 「 毬栗 ( いがぐり )は果報ものですよ。 」 私を見て 苦笑 ( にがわらい )しながら、羽織でくるくると夏帽子を包んで、みしと言わせて、尻にかって、投膝に組んで 掌 ( てのひら )をそらした。 「がきに踏まれるよりこの方がさばさばします。 おかしな事には、いま私たちが 寄凭 ( よりかか )るばかりにしている、この欄干が、まわりにぐるりと板敷を取って、 階子壇 ( はしごだん )を長方形の大穴に抜いて、押廻わして、しかも新しく切立っているので、はじめから、たとえば毛利一樹氏、自叙伝中の妻恋坂下の物見に似たように思われてならなかったのである。 はじめ、別して酔った時は、幾度も 画工 ( えかき )さんが話したから、私たちはほとんどその言葉通りといってもいいほど覚えている。 が、名を知られ、売れッこになってからは、 気振 ( けぶ )りにも出さず、事の一端に触れるのをさえ避けるようになった。 苦心談、立志談は、往々にして、その反対の意味の、自己 吹聴 ( ふいちょう )と、陰性の自讃、卑下高慢になるのに気附いたのである。 但し、以下の 一齣 ( ひとくさり )は、かつて、一樹、幹次郎が話したのを、ほとんどそのままである。 内中皆 裸体 ( はだか )です。 六畳に三畳、二階が六畳という浅間ですから、開放しで皆見えますが、近所が近所だから、そんな事は平気なものです。 実はまるで衣類がない。 男はまだしも、 婦 ( おんな )もそれです。 ……主人が 医師 ( いしゃ )の出来損いですから、出来損いでも奥さん。 ……さしあたってな 小博打 ( こばくち )が 的 ( あて )だったのですから、 三下 ( さんした )の 潜 ( もぐ )りでも、姉さん。 ……あとはただ 真白 ( まっしろ )な……冷い……のです。 冷い、と 極 ( き )めたのは妙ですけれども、飢えて 空腹 ( ひだる )くっているんだから、夏でも火気はありますまい。 何しろその体裁ですから、すなおな髪を 引詰 ( ひッつ )めて 櫛巻 ( くしまき )でいましたが、生際が薄青いくらい、襟脚が透通って、 日南 ( ひなた )では消えそうに、おくれ毛ばかり 艶々 ( つやつや )として、涙でしょう、濡れている。 悲惨な事には、水ばかり飲むものだから、 身籠 ( みごも )ったようにかえってふくれて、下腹のゆいめなぞは、乳の下を 縊 ( くび )ったようでしたよ。 空腹 ( すきはら )にこたえがないと、つよく 紐 ( ひも )をしめますから、男だって。 その大切な乳をかくす古手拭は、 膚 ( はだ )に合った綺麗好きで、腰のも一所に、ただ洗いただ洗いするんですから、 油旱 ( あぶらでり )の炎熱で、銀粉のようににじむ汗に、ちらちらと 紗 ( しゃ )のように 靡 ( なび )きました。 これなら干ぼしになったら、すぐ羽にかわって欄間を飛ぶだろうと思ったほどです。 いいえ、天人なぞと、そんな 贅沢 ( ぜいたく )な。 裏長屋ですもの、くさばかげろうの幽霊です。 その手拭が、娘時分に、踊のお 温習 ( さらい )に配ったのが、 古行李 ( ふるこうり )の底かなにかに残っていたのだから、あわれですね。 千葉だそうです。 千葉の町の大きな料理屋、 万翠楼 ( ばんすいろう )の姉娘が、今の主人の、その頃医学生だったのと間違って。 ……ただ、それだけではないらしい。 学生の癖に、悪く、商売人じみた、はなを引く、 賭碁 ( かけご )を打つ。 それじゃ退学にならずにいません。 佐原の出で、なまじ故郷が近いだけに、外聞かたがた東京へ 遁出 ( にげだ )した。 一枚、畚褌の上へ 引張 ( ひっぱ )らせると、脊は高し、幅はあり、 風采 ( ふうさい )堂々たるものですから、まやかし病院の代診なぞには持って来いで、あちこち雇われもしたそうですが、 脉 ( みゃく )を引く前に、顔の 真中 ( まんなか )を見るのだから、身が持てないで、その目下の始末で。 …… 変に物干ばかり新しい、妻恋坂下へ落ちこぼれたのも、洋服の 月賦払 ( げっぷばらい )の 滞 ( とどこおり )なぞから 引 ( ひっ )かかりの 知己 ( ちかづき )で。 どの道落ちる城ですが、その没落をはやめたのは、 慾 ( よく )にあせって、怪しい 企 ( たくらみ )をしたからなんです。 数珠一 聯 ( れん )。 千葉を遁げる時からたしなんだ、いざという時の 二品 ( ふたしな )を添えて、何ですか、三題話のようですが、 凄 ( すご )いでしょう。 ……事実なんです。 貞操の 徴 ( しるし )と、女の生命とを預けるんだ。 ) 使 ( つかい )に行ったんです。 冷汗 ( ひやあせ )を流して、談判の結果が三分、科学的に数理で 顕 ( あらわ )せば、七十と五銭ですよ。 お雪さんの身になったらどうでしょう。 じか肌と、自殺を質に入れたんですから。 自殺を質に入れたのでは、死ぬよりもつらいでしょう。 質の使、 笊 ( ざる )でお 菜漬 ( はづけ )の買ものだの、……これは酒よりは 香 ( におい )が利きます。 一人は、今は小使を志願しても間に合わない、慢性の政治狂と、 三個 ( さんにん )を、紳士、旦那、博士に仕立てて、さくら、というものに使って、鴨を 剥 ( はい )いで、骨までたたこうという 企謀 ( たくらみ )です。 前々から、ちゃら金が、ちょいちょい来ては、昼間の 廻燈籠 ( まわりどうろう )のように、二階だの、 濡縁 ( ぬれえん )だの、薄羽織と、 兀頭 ( はげあたま )をちらちらさして、ひそひそと相談をしていましたっけ。 黒絽 ( くろろ )の五つ紋に、おなじく鉄無地のべんべらもの、くたぶれた帯などですが、足袋まで身なりが出来ました。 そうは 資本 ( もとで )が続かないからと、政治家は、セルの着流しです。 ……そこで、小僧のを脱がせて、鳥打帽です。 一つ穴のお 螻 ( けら )どもが、反対に鴨にくわれて、でんぐりかえしを打ったんですね。 ……夜になって、炎天の 鼠 ( ねずみ )のような、目も口も開かない、どろどろで帰って来た、三人のさくらの半間さを、ちゃら金が、いや怒るの怒らないの。 ……儲けるどころか、 対手方 ( あいてかた )に大分の 借 ( かり )が出来た、さあどうする。 ……で、損料…… 立処 ( たちどころ )に損料を 引剥 ( ひっぱ )ぐ。 中にも落第の投機家なぞは、どぶつで汗ッかき、おまけに 脚気 ( かっけ )を煩っていたんだから、このしみばかりでも 痛事 ( いたごと )ですね。 尻上りに、うら悲しい……やむ事を得ません、得ませんけれども、悪い癖です。 心得なければ 不可 ( いけ )ませんね。 )と 唖 ( おし )の一声ではないけれども、いくら叱っても治らない。 弓が上手で、のちにお城に、もののけがあって、国の 守 ( かみ )が 可恐 ( おそろし )い 変化 ( へんげ )に悩まされた時、自から進んで出て、奥庭の大椿に向っていきなり矢を 番 ( つが )えた。 )と切って放すと、枝も葉も 萎々 ( なえなえ )となって、ばたり。 言葉は気をつけなければ 不可 ( いけ )ませんね。 食不足で、ひくひく煩っていた男の 児 ( こ )が七転八倒します。 私は方々の 医師 ( いしゃ )へ駆附けた。 が、一人も来ません。 お雪さんが、抱いたり、 擦 ( さす )ったり、半狂乱でいる処へ、右の、ばらりざんと敗北した落武者が 這込 ( はいこ )んで来た始末で……その悲惨さといったらありません。 食あたりだ。 医師 ( いしゃ )のお父さんが、診察をしたばかりで、 薮 ( やぶ )だからどうにも出来ない。 あくる朝なくなりました。 幾月ぶりかの、お魚だから、大人は、坊やに譲ったんです。 その癖、出がけには、坊や、晩には玉子だぞ。 お土産は電車だ、と云って出たんですのに。 ご新姐あてに、千葉から荷が着いている。 お届けをしようか、受取りにおいで下さるか、という両国辺の運送問屋から来たのでした。 品物といえば釘の折でも、 屑屋 ( くずや )へ売るのに 欲 ( ほし )い処。 ……返事を出す端書が買えないんですから、配達をさせるなぞは思いもよらず……急いで取りに行く。 この 使 ( つかい )の小僧ですが、二日ばかりというもの、かたまったものは、 漬菜 ( つけな )の切れはし、黒豆一粒入っていません。 ほんとうのひもじさは、話では言切れない、あなた方の腹がすいたは、都合によってすかせるのです。 いいえ、何も喧嘩をするのじゃありません、おわかりにならんと思いますから、よしますが。 もっとも、その前日も、 金子 ( かね )無心の使に、芝の 巴町 ( ともえちょう )附近 辺 ( あたり )まで遣られましてね。 出来ッこはありません。 勿論、往復とも 徒歩 ( てく )なんですから、 帰途 ( かえり )によろよろ目が 眩 ( くら )んで、ちょうど、一つ橋を出ようとした時でした。 土を 引掻 ( ひッか )いて起上がる始末で、人間もこうなると浅間しい。 ……行暮れた旅人が灯をたよるように、山賊の 棲 ( す )でも、いかさま碁会所でも、 気障 ( きざ )な奴でも、路地が曲りくねっていても、何となく 便 ( たよ )る気が出て。 客は居ません。 ちゃら金が、碁盤の前で、何だか古い帳面を繰っておりましたっけ。 (や、お入り。 )金歯で呼込んで、家内が留守で 蕎麦 ( そば )を取る処だ、といって、一つ食わしてくれました。 )と云って、手紙を 托 ( ことづ )けたんです。 菫色 ( すみれいろ )の横封筒……いや、どうも、その癖、言う事は古い。 (いい加減に 常盤御前 ( ときわごぜん )が身のためだ。 )とこうです。 どの道そんな蕎麦だから、伸び過ぎていて、ひどく 中毒 ( あた )って、 松住町 ( まつずみちょう )辺をうなりながら歩くうちに、どこかへ落してしまいましたが。 さあ使いに行く。 その臭さというものは。 ……とにかく妻恋坂下の穴を出ました。 こんなにしていて、どうなるだろう。 櫓 ( やぐら )のような物干を見ると、ああ、いつの間にか、そこにも片隅に、小石が積んであるんです。 何ですか、明神様の森の空が、雲で 真暗 ( まっくら )なようでした。 ひょろひょろの小僧は、叩きつけられたように、向う側の絵草紙屋の 軒前 ( のきさき )へ駆込んだんです。 濡れるのを 厭 ( いと )いはしません。 吹倒されるのが 可恐 ( おそろし )かったので、柱へつかまった。 一軒隣に、焼芋屋がありましてね。 またこの路地裏の道具屋が、私の、東京ではじめて 草鞋 ( わらじ )を脱いだ場所で、泊めてもらった。 しかもその日、晩飯を食わせられる時、道具屋が、めじの刺身を 一臠 ( ひときれ ) 箸 ( はし )で挟んで、鼻のさきへぶらさげて、東京じゃ、これが一皿、じゃあない、一臠、 若干金 ( いくら )につく。 ……お前たちの二日分の 祭礼 ( まつり )の小遣いより高い、と云って聞かせました。 しかし、ぼんやり 突立 ( つった )っては、よくこの店を 覗 ( のぞ )いたものです。 暗くなる……薄暗い中に、 颯 ( さっ )と風に 煽 ( あお )られて、 媚 ( なま )めかしい 婦 ( おんな )の 裙 ( もすそ )が燃えるのかと思う、あからさまな、 真白 ( まっしろ )な大きな腹が、 蒼 ( あお )ざめた顔して、宙に 倒 ( さかさま )にぶら下りました。 ……御存じかも知れません、 芳年 ( よしとし )の月百姿の中の、 安達 ( あだち )ヶ原、縦絵 二枚続 ( にまいつづき )の 孤家 ( ひとつや )で、店さきには遠慮をする 筈 ( はず )、別の絵を 上被 ( うわっぱ )りに伏せ込んで、窓の柱に掛けてあったのが、 暴風雨 ( あらし )で帯を引裂いたようにめくれたんですね。 ああ、吹込むしぶきに、肩も 踵 ( かかと )も、わなわな震えている。 ) 「まぶたを 溢 ( あふ )れて、鼻柱をつたう大粒の涙が、唇へ甘く濡れました。 甘い涙。 ここで甘い涙と申しますのは。 左の目が 真紅 ( まっか )になって、渋くって、辛くって困りました時、お雪さんが、乳を絞って、つぎ込んでくれたのです。 一人児 ( ひとりっこ )だから、時々飲んでいたんですが、食が少いから 涸 ( か )れがちなんです。 私を 仰向 ( あおむ )けにして、横合から胸をはだけて、……まだ 袷 ( あわせ )、お雪さんの肌には 微 ( かす )かに 紅 ( くれない )の 気 ( け )のちらついた、春の末でした。 目をはずすまいとするから、弱腰を 捻 ( ひね )って、 髷 ( まげ )も 鬢 ( びん )もひいやりと額にかかり……白い半身が逆になって見えましょう。 ……今時……今時……そんな古風な、療治を、 禁厭 ( まじない )を、するものがあるか、とおっしゃいますか。 ええ、おっしゃい。 そんな事は、まだその頃ありました、精盛薬館、 一二 ( おいちに )を、掛売で談ずるだけの、余裕があっていう事です。 このありさまは、ちょっと物議になりました。 主人 ( あるじ )の留守で。 二階から覗いた投機家が、容易ならぬ沙汰をしたんですが、若い燕だか、小僧の蜂だか、そんな 詮議 ( せんぎ )は、飯を食ったあとにしようと、徹底した空腹です。 それ以来、涙が甘い。 いまそのこぼれるにつけても、さかさに釣られた 孤家 ( ひとつや )の女の乳首が目に入って来そうで、従って、ご新姐の身の上に、いつか、おなじ事でもありそうでならなかった。 その日の 中 ( うち )に、果しておなじような事が起ったんです。 初茸 ( はつたけ )です。 そのために事が起ったんです。 通り雨ですから、すぐに、 赫 ( かっ )と、まぶしいほどに日が照ります。 甘い涙の 飴 ( あめ )を 嘗 ( な )めた 勢 ( いきおい )で、あれから秋葉ヶ原をよろよろと、佐久間町の 河岸 ( かし )通り、みくら橋、左衛門橋。 天井に網を揃えて掛けてあるのが見えました。 とその涙が甘いのです。 餅か、団子か、お雪さんが待っていよう。 (一銭五厘です。 端書代が立替えになっておりますが。 ) (つい、あの、持って来ません。 ) ( 些細 ( ささい )な事ですが、店のきまりはきまりですからな。 ) 年の 少 ( わか )い手代は、そっぽうを向く。 小僧は、げらげらと笑っている。 (貸して下さい。 ) (お貸し申さないとは申しませんが。 ) (このしるしを置いて行きます。 貸して下さい。 (よう!)と 反 ( そ )りかえった掛声をして、 (みどり屋、ゆき。 …… 医師 ( いしゃ )と 遁 ( に )げた、この 別嬪 ( べっぴん )さんの使ですかい、きみは。 ……ぼくは店用で行って知ってるよ。 ……果報ものだね、きみは。 ……可愛がってくれるだろう。 雪白肌の 透綾娘 ( すきあやむすめ )は、ちょっと浮気ものだというぜ。 ) と言やあがった…… その透綾娘は、手拭の 肌襦袢 ( はだじゅばん )から透通った、肩を落して、裏の三畳、濡縁の柱によっかかったのが、その姿ですから、くくりつけられでもしたように見えて、ぬの一重の膝の上に、 小児 ( こども )の絵入雑誌を拡げた、あの赤い絵の具が、腹から血ではないかと、ぞっとしたほど、さし 俯向 ( うつむ )いて、顔を両手でおさえていました。 ) と二階から、力のない、鼻の 詰 ( つま )った 大 ( おおき )な声。 (初茸ですわ。 ) と、また途方もない声をして、 階子段 ( はしごだん )一杯に、 大 ( おおきな )な男が、 褌 ( ふんどし )を 真正面 ( まっしょうめん )に 顕 ( あら )われる。 続いて、足早に 刻 ( きざ )んで下りたのは、政治狂の黒い 猿股 ( さるまた )です。 ぎしぎしと音がして、青黄色に膨れた、投機家が、豚を一匹、まるで吸った 蛭 ( ひる )のように、ずどうんと腰で 摺 ( ず )り、欄干に、よれよれの 兵児帯 ( へこおび )をしめつけたのを力綱に 縋 ( すが )って、ぶら下がるように 楫 ( かじ )を取って下りて来る。 脚気 ( かっけ )がむくみ上って、もう歩けない。 小児 ( こども )のつかった、おかわを二階に上げてあるんで、そのわきに 西瓜 ( すいか )の皮が転がって、 蒼蠅 ( あおばえ )が 集 ( たか )っているのを 視 ( み )た時ほど、 情 ( なさけ )ない思いをした事は余りありません。 その二階で、三人、何をしているかというと、はなをひくか、あの、泥石の紙の盤で、碁を打っていたんですがね。 欠けた瀬戸火鉢は一つある。 けれども、煮ようたって 醤油 ( しょうゆ )なんか思いもよらない。 焼くのに、炭の 粉 ( こ )もないんです。 政治狂が便所わきの 雨樋 ( あまどい )の朽ちた奴を……一雨ぐらいじゃ直ぐ乾く……握り壊して来る間に、お雪さんは、茸に敷いた山草を、あの小石の前へ挿しましたっけ。 古新聞で火をつけて、金網をかけました。 処で、火気は当るまいが、 溢出 ( はみで )ようが、皆 引掴 ( ひッつか )んで頬張る気だから、二十ばかり 初茸 ( はつたけ )を一所に載せた。 残らず、 薄樺色 ( うすかばいろ )の笠を 逆 ( さかさ )に、白い軸を立てて、 真中 ( まんなか )ごろのが、じいじい音を立てると、……青い 錆 ( さび )が茸の声のように浮いて動く。 (塩はどうした。 ) (ござんせん。 ) ( 魚断 ( うおだち )、 菜断 ( さいだち )、 穀断 ( こくだち )と、 茶断 ( ちゃだち )、 塩断 ( しおだち )……こうなりゃ 鯱立 ( しゃっちょこだ )ちだ。 ) と、 主人 ( あるじ )が、どたりと寝て、両脚を大の字に開くと、 (あああ、待ちたまえ、 逆 ( さかさ )になった方が、いくらか 空腹 ( ひだる )さが 凌 ( しの )げるかも知れんぞ。 経験じゃ。 ) と政治狂が、柱へ、うんと 搦 ( から )んで、尻を立てた。 (ぼくは、はや、この方が楽で、もう遣っとるが。 ) と、水浸しの丸太のような、脚気の足を、 襖 ( ふすま )の 破 ( や )れ桟に、ぶくぶくと掛けている。 (幹もやれよ。 ) と 主人 ( あるじ )が、尻で 尺蠖虫 ( しゃくとりむし )をして、足をまた 突張 ( つっぱ )って、 (成程、気がかわっていい、茸は焼けろ、こっちはやけだ。 ) その挙げた足を、どしんと、お雪さんの肩に乗せて、柔かな 細頸 ( ほそくび )をしめた時です。 (ああ、ひもじいを 逆 ( さかさ )にすれば、おなかが、くちいんだわね。 ) と 真俯向 ( まうつむ )けに、頬を畳に、足が、空で一つに、ひたりとついて、白鳥が目を眠ったようです。 ハッと思うと、私も、つい、脚を天井に向けました。 ) 名工のひき刀が線を青く刻んだ、小さな雪の 菩薩 ( ぼさつ )が一体、くるくると二度、三度、六地蔵のように廻る……濃い 睫毛 ( まつげ )がチチと瞬いて、 耳朶 ( みみたぶ )と、 咽喉 ( のど )に、薄紅梅の血が 潮 ( さ )した。 (初茸と一所に焼けてしまえばいい。 ) 脚気は 喘 ( あえ )いで、白い舌を 舐 ( な )めずり、政治狂は、目が黄色に光り、 主人 ( あるじ )はけらけらと笑った。 皆逆立ちです。 そして、お雪さんの言葉に 激 ( はげ )まされたように、ぐたぐたと肩腰をゆすって、 逆 ( さかさま )に、のたうちました。 ひとりでに、頭のてっぺんへ流れる涙の 中 ( うち )に、網の初茸が、同じように、むくむくと、笠軸を動かすと、私はその下に、燃える火を思った。 皆、 咄嗟 ( とっさ )の間、ですが、その、廻っている乳が、ふわふわと浮いて、滑らかに白く、一列に並んだように思う…… (心配しないでね。 ) と 莞爾 ( にっこり )していった、お雪さんの 言 ( ことば )が、 逆 ( さかさ )だから、(お 遁 ( に )げ、 危 ( あぶな )い。 これに応じて、山伏が、まず揚幕の 裡 ( うち )にて謡ったのである。 が、鷺玄庵と聞いただけでも、思いも寄らない、若く 艶 ( つや )のある、しかも取沈めた声であった。 」 すらすらと歩を移し、露を払った 篠懸 ( すずかけ )や、 兜巾 ( ときん )の 装 ( よそおい )は、弁慶よりも、 判官 ( ほうがん )に、むしろ新中納言が山伏に 出立 ( いでた )った 凄味 ( すごみ )があって、且つ色白に美しい。 一二の松も影を 籠 ( こ )めて、 袴 ( はかま )は霧に乗るように、三密の声は朗らかに且つ陰々として、月清く、風白し。 化鳥 ( けちょう )の調の 冴 ( さ )えがある。 「ああ、婦人だ。 …… 鷺流 ( さぎりゅう )ですか。 」 私がひそかに聞いたのに、 「さあ。 」 一言いったきり、一樹が 熟 ( じっ )と 凝視 ( みつ )めて、見る見る顔の色がかわるとともに、二度ばかり続け様に、胸を 撫 ( な )でて目をおさえた。 先を急ぐ。 ……狂言はただあら筋を言おう。 舞台には茸の数が十三出る。 が、実はこの怪異を 祈伏 ( いのりふ )せようと、三山の法力を用い、秘密の 印 ( いん )を結んで、いら高の数珠を 揉 ( も )めば揉むほど、 夥多 ( おびただ )しく一面に生えて、次第に数を増すのである。 茸は 立衆 ( たてしゅう )、いずれも、見徳、 嘯吹 ( うそのふき )、 上髭 ( うわひげ )、思い思いの面を 被 ( かぶ )り、 括袴 ( くくりばかま )、 脚絆 ( きゃはん )、腰帯、 水衣 ( みずぎぬ )に包まれ、揃って、笠を被る。 塗笠、 檜笠 ( ひのきがさ )、竹子笠、 菅 ( すげ )の笠。 松茸、椎茸、とび茸、おぼろ編笠、名の知れぬ、 菌 ( きのこ )ども。 笠の形を、見物は、心のままに 擬 ( なぞ )らえ候え。 」 と言う。 詞 ( ことば )につれて、如法の茸どもの、目を 剥 ( む )き、舌を吐いて 嘲 ( あざ )けるのが、憎く毒々しいまで、山伏は 凛 ( りん )とした 中 ( うち )にもかよわく見えた。 いくち、しめじ、 合羽 ( かっぱ )、坊主、熊茸、 猪茸 ( ししたけ )、 虚無僧茸 ( こむそうたけ )、のんべろ茸、生える、 殖 ( ふ )える。 蒸上り、 抽出 ( ぬきいで )る。 ……地蔵が化けて月のむら雨に 托鉢 ( たくはつ )をめさるるごとく、影 朧 ( おぼろ )に、のほのほと並んだ時は、陰気が、 緋 ( ひ )の 毛氈 ( もうせん )の座を圧して、金銀のひらめく 扇子 ( おうぎ )の、秋草の、露も砂子も暗かった。 女性の山伏は、いやが上に美しい。 ああ、窓に稲妻がさす。 胸がとどろく。 たちまち、この時、鬼頭巾に武悪の面して、極めて毒悪にして、邪相なる大茸が、傘を半開きに 翳 ( かざ )し、みしと 面 ( つら )をかくして 顕 ( あら )われた。 しばらくして、この傘を大開きに開く、鼻を 嘯 ( うそぶ )き、 息吹 ( いぶ )きを放ち、毒を嘯いて、「取て 噛 ( か )もう、取て噛もう。 」と躍りかかる。 取着き 引着 ( ひッつ )き、十三の茸は、アドを、なやまし、 嬲 ( なぶ )り嬲り、山伏もともに追込むのが 定 ( じょう )であるのに。 」 山伏の 言 ( ことば )につれ、 件 ( くだん )の 毒茸 ( どくたけ )が、二の松を押す時である。 幕の 裙 ( すそ )から、ひょろりと出たものがある。 切禿 ( きりかむろ )で、白い袖を着た、色白の、丸顔の、あれは、いくつぐらいだろう、 這 ( は )うのだから二つ三つと思う弱々しい女の子で、かさかさと 衣 ( き )ものの膝ずれがする。 菌 ( きのこ )の領した 山家 ( やまが )である。 舞台は、山伏の気が 籠 ( こも )って、 寂 ( しん )としている。 ト、今まで、誰一人ほとんど 跫音 ( あしおと )を立てなかった処へ、屋根は熱し、天井は蒸して、吹込む風もないのに、かさかさと聞こえるので、 九十九折 ( つづらおり )の山路へ、一人、 篠 ( しの )、熊笹を分けて、 嬰子 ( あかご )の 這出 ( はいだ )したほど、思いも掛けねば無気味である。 ああ、山伏を見て、口で、ニヤリと笑う。 悚然 ( ぞっ )とした。 「鷺流?」 這う子は早い。 返す手で、 「焼きくおう。 焼きくおう。 」 鼻筋鋭く、頬は 白澄 ( しろず )む、黒髪は 兜巾 ( ときん )に乱れて、 生競 ( はえきそ )った茸の、のほのほと並んだのに、 打振 ( うちふる )うその数珠は、空に 赤棟蛇 ( やまかがし )の飛ぶがごとく 閃 ( ひらめ )いた。 が、いきなり居すくまった茸の一つを、山伏は 諸手 ( もろて )に掛けて、すとんと、笠を下に、 逆 ( さかさ )に立てた。 二つ、三つ、四つ。 恐れて、 魅 ( み )せられたのであろう。 長上下 ( なががみしも )は、脇座にとぼんとして、ただ首の横ざまに傾きまさるのみである。 「一樹さん。 」 真蒼 ( まっさお )になって、 身体 ( からだ )のぶるぶると震う一樹の袖を取った、私の手を、その 帷子 ( かたびら )が、落葉、いや、茸のような触感で 衝 ( つ )いた。 あの世話方の顔と 重 ( かさな )って、五六人、揚幕から。 切戸口にも、楽屋の 頭 ( かしら )が 覗 ( のぞ )いたが、ただ目鼻のある茸になって、いかんともなし得ない。 その二三秒時よ。 稲妻の瞬く間よ。 見物席の少年が二三人、足袋を空に、 逆 ( さかさ )になると、膝までの 裙 ( すそ )を 飜 ( ひるがえ )して 仰向 ( あおむけ )にされた少女がある。 マッシュルームの類であろう。 大人は、立構えをし、 遁身 ( にげみ )になって、声を詰めた。 私も立とうとした。 あの舞台の下は火になりはしないか。 地震、と欄干につかまって、目を返す、森を隔てて、 煉瓦 ( れんが )の 建 ( たて )もの、教会らしい 尖塔 ( せんとう )の雲端に、稲妻が蛇のように縦にはしる。 静寂、深山に似たる時、這う子が火のつくように、山伏の 裙 ( すそ )を取って泣出した。 眉をひらき、瞳を澄まして、向直って、 「幹次郎さん。 」 「覚悟があります。 」 つれに対すると、客に会釈と、一度に、左右へ 言 ( ことば )を切って、一樹、幹次郎は、すっと出て、一尺ばかり舞台の端に、女の 褄 ( つま )に片膝を乗掛けた。 そうして、一度 押戴 ( おしいただ )くがごとくにして、ハタと両手をついた。 「かなしいな。 ……あれから、今もひもじいわ。 」 寂しく 微笑 ( ほほえ )むと、 掻 ( か )いはだけて、雪なす胸に、ほとんど 玲瓏 ( れいろう )たる乳が玉を 欺 ( あざむ )く。 」 「うむ、 起 ( た )て。 ……お起ち、私が起たせる。 」 と、かッきと、腕にその泣く子を取って、一樹が腰を引立てたのを、 添抱 ( そえだ )きに胸へ抱いた。 「この豆府娘。 」 と 嘲 ( あざけ )りながら、さもいとしさに堪えざるごとく言う下に、 「若いお父さんに骨をお貰い。 母さんが血をあげる。 」 俯向 ( うつむ )いて、我と我が口にその乳首を含むと、ぎんと 白妙 ( しろたえ )の 生命 ( いのち )を絞った。 ことこと、ひちゃひちゃ、骨なし子の血を吸う音が、舞台から響いた。 が、子の口と、母の胸は、見る見る紅玉の 柘榴 ( ざくろ )がこぼれた。 」 といって、顔をかくして、倒れた。 顔はかくれて、両手は十ウの 爪紅 ( つまべに )は、世に散る 卍 ( まんじ )の白い 痙攣 ( けいれん )を起した、お雪は乳首を 噛切 ( かみき )ったのである。 一昨年 ( おととし )の事である。 この子は、母の乳が、肉と血を与えた。 いま一樹の手に、ふっくりと、且つ健かに育っている。 不思議に、一人だけ 生命 ( いのち )を助かった女が、震災の、あの 劫火 ( ごうか )に追われ追われ、縁あって、玄庵というのに助けられた。 その 妾 ( めかけ )であるか、娘分であるかはどうでもいい。 老人だから、楽屋で急病が起って、踊の 手練 ( てだれ )が、見真似の舞台を勤めたというので、よくおわかりになろうと思う。 何、何、なぜ、それほどの 容色 ( きりょう )で、酒場へ出なかった。 とおっしゃるか? それは困る、どうも弱ったな。 一樹でも分るまい。 なくなった、みどり屋のお雪さんに……お聞き下さい。

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福島県福島市荒井の住所

あざ いなか しょうが っ こう

梅雨に入った。 いきなり大雨。 寝坊を決め込む先から、屋根を打つ雨音に目を覚まさせられる。 それでもツリーハウスは快適だ。 (いつも機嫌よく、陽気でいよう! )さて、コロナにビビる人、コロナを気にしない人、コロナに対する立ち位置でライフスタイルが変わる。 自粛解除になったからと言っていきなり、居酒屋やキャバクラに行く気にはなれないが。 「おっかなびっくりでも、見てみたい」その臆病な好奇心がボクを旅へと駆り立ててきた。 「虎穴に入らずんば虎子を得ず」"Norisk,nogain. "危機意識をもって楽観的に生きよう。 海外では、その意識が一層高まる。 それがそのままwithCoronaの生き方に通じる。 ムリポジになる必要はないが、ネガティブ思考でも楽観的に考えよう。 それには、すべてを良いように解釈すること。 すべてを悲観的に考え、楽観的... 『老春時代』を謳歌しよう! さよならファミレス!コロナ禍で大リストラ…突然訪れた一時代の終わり先ず、一連のコロナ禍を受けて明らかになったファミレス業界の動きを振り返ります。 ・ロイヤルホールディングスが不採算の続く「ロイヤルホスト」「てんや」など約70店舗を2021年度末までに閉店することを発表。 内訳は非公表だが大部分が「ロイヤルホスト」と見られる。 (5月14日)・すかいらーくホールディングス(「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」等を運営)が、7月1日から全店での深夜営業廃止を発表。 (5月26日)・店舗数で業界第3位の「ジョイフル」が約200店舗を2020年7月から順次閉店すると発表。 特に、中国・四国・九... さよならファミレス!コロナ禍で大リストラ…突然訪れた一時代の終わり 10代がよく使う流行語「それなー」「詰んだ」30代以降に通じないのは「えぐいて」「レベチLINEは5月25日、「年代ごとの流行語や認知度」に関する調査結果を発表した。 調査は4月にネット上で実施し、15~59歳の男女5250人から回答を得た。 10代に「普段使っている流行語」を聞いたところ、最も多かったのは「それなー」(69. 6%)。 次いで「詰んだ」(56. 4%)、「陽キャ/陰キャ」(55. 8%)が続いた。 一時期流行した「タピる」は上位にランクインしなかった。 印象的だった流行語30代「チョベリグ」「激おこぷんぷん丸」10代の流行語について、親世代(40~50代)はどれほど知っているかを聞いた。 「それなー」は半数以上の人が意味を理解できると回答。 「じわる」「エモい」「〇〇み」も3割以上の人が知っていると回答した。 10代がよく使う流行語「それなー」「詰んだ」30代以降に通じないのは「えぐいて」「レベチ 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンは、世界の人々が通常の生活に戻るための近道と見られており、それが開発されることの重要性は非常に高い。 しかし臨床試験がスタートし、製造契約がすでに締結されるなかにおいて、一部ではより慎重なスタンスが示され始めている。 理想的なのは、感染および感染拡大を安全に阻止してくれるワクチンの開発だろう。 しかし、これまでに開発されたものを見ると、簡単に実現できるものではないことが一目で分かる。 エイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)を発症させるエイズウイルス(HIV)が科学者によって同定されたのは30年以上も前だが、ワクチンはいまだ存在していない。 1943年に初めて見... 新型コロナ、人類はワクチンを手にすることができないのか?.

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東京

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全国郵便局名録.2008• 全国郵便局名録2008目次• 局名録の部• 東京都 13• 埼玉県 40• 千葉県 51• 茨城県 64• 栃木県 73• 群馬県 79• 神奈川県 85• 山梨県 99• 長野県 104• 新潟県 115• 愛知県 127• 三重県 144• 静岡県 152• 岐阜県 162• 石川県 170• 富山県 176• 福井県 181• 大阪府 186• 京都府 206• 兵庫県 215• 奈良県 232• 滋賀県 238• 和歌山県 243• 広島県 249• 鳥取県 262• 島根県 267• 岡山県 274• 山口県 283• 愛媛県 290• 徳島県 297• 香川県 301• 高知県 305• 熊本県 311• 長崎県 322• 福岡県 330• 佐賀県 344• 大分県 348• 宮崎県 355• 鹿児島県 361• 沖縄県 374• 宮城県 378• 福島県 386• 岩手県 396• 青森県 404• 山形県 411• 秋田県 418• 北海道 425• 南極・船内 451• 閉鎖郵便局 452• 索引の部• あ 476• い 483• う 492• え 495• お 496• か 508• が 519• き 519• ぎ 524• く 525• ぐ 529• け 529• げ 529• こ 529• ご 535• さ 536• ざ 542• し 542• じ 550• す 550• ず 552• せ 553• ぜ 555• そ 555• ぞ 556• た 556• だ 562• ち 563• つ 565• て 567• で 568• と 568• ど 574• な 574• に 582• ぬ 586• ね 586• の 587• は 588• ば 593• ぱ 593• ひ 593• び 600• ぴ 601• ふ 601• ぶ 606• ぷ 606• へ 606• べ 607• ほ 607• ぼ 608• ぽ 608• ま 608• み 612• む 618• め 619• も 619• や 621• ゆ 625• よ 626• ら 630• り 630• る 631• れ 631• ろ 631• わ 631• 郵便局所・郵便局名関係• 難読郵便局名一覧 459• 郵便事業会社支店電話番号一覧 463• ゆうちょ銀行本支店一覧 470• かんぽ生命保険支店一覧 474• 郵便局数一覧表(平成19年10月1日現在) 634• 郵便局数一覧表(平成19年10月1日現在・貯金取扱局) 637• 郵便局数一覧表(平成19年9月30日現在) 640• 郵便局について(解説) 643• 旧称郵便局名リスト 775• 営業時間・営業案内関係• 窓口取扱時間一覧表 649• 郵便貯金ホリデーサービス• ・平日土曜稼働延長出張所一覧 758• 日付印関係• 初日印・特印定例使用局一覧 773• 平成19年10月~12月分改廃記録 830• この索引は、局名表に収録されている局所のうち、出張所を除くすべての局所を全国単位で配列したもので、五十音順となっています。 左から局名・支店名の読み、局名・支店名(分室の場合は分室名。 〔〕内は分室の本局名)、局種記号、ページ数の順となっています。 郵便事業会社支店・郵便局併設の場合、局名・支店名いずれでも検索できるようにしてありますが、局名・支店名が違う場合は、局名からは支店名、支店名からは局名を併記してあります。 郵便事業会社支店については支店電話番号一覧、ゆうちょ銀行本支店については、本支店一覧のページを併記してあります。 かんぽ生命保険支店については、本支店一覧のページを掲載してあります。 「あ」• あおばだい ¥ 青葉台 85• あおばだい ¥ 青葉台 471• あおもり @ 青森 475• あおもり ¥ 青森 404• あおもり ¥ 青森 473• あかさか ¥ 赤坂 30• あかさか ¥ 赤坂 470• あかし ¥ 明石 218• あかし ¥ 明石 472• あかばね ¥ 赤羽 19• あかばね ¥ 赤羽 470• あきた @ 秋田 475• あきた ¥ 秋田 419• あきた ¥ 秋田 473• あげお ¥ 上尾 41• あげお ¥ 上尾 470• あさか ¥ 朝霞 42• あさか ¥ 朝霞 470• あさくさ @ 浅草 474• あさくさ ¥ 浅草 25• あさくさ ¥ 浅草 470• あさひかわ @ 旭川 475• あざぶ @ 麻布 474• あだち @ 足立 474• あつぎ ¥ 厚木 92• あつぎ ¥ 厚木 471• あべの ¥ 阿倍野 187• あべの ¥ 阿倍野 472• あまがさき ¥ 尼崎 219• あまがさき ¥ 尼崎 472• あらかわ ¥ 荒川 15• あらかわ ¥ 荒川 470• あんじょう ¥ 安城 133• あんじょう ¥ 安城 472• 「い」• いいだ ¥ 飯田 105• いいだ ¥ 飯田 471• いくの ¥ 生野 187• いくの ¥ 生野 472• いけだ ¥ 池田 195• いけだ ¥ 池田 472• いこま ¥ 生駒 232• いこま ¥ 生駒 473• いたばし ¥ 板橋 15• いたばし ¥ 板橋 470• いたみ ¥ 伊丹 221• いたみ ¥ 伊丹 473• いちかわ ¥ 市川 53• いちかわ ¥ 市川 471• いちのみや ¥ 一宮 133• いちのみや ¥ 一宮 472• いちはら ¥ 市原 54• いちはら ¥ 市原 471• いばらき @ 茨城 474• いばらき ¥ 茨木 196• いばらき ¥ 茨木 472• いまばり ¥ 今治 291• いまばり ¥ 今治 473• いわき ¥ いわき 387• いわき ¥ いわき 473• いわくに ¥ 岩国 283• いわくに ¥ 岩国 473• 「う」• うしごめ ¥ 牛込 22• うしごめ ¥ 牛込 470• うつのみや @ 宇都宮 474• うつのみや ¥ 宇都宮 73• うつのみや ¥ 宇都宮 471• うらやす ¥ 浦安 54• うらやす ¥ 浦安 471• うらわ ¥ 浦和 40• うらわ ¥ 浦和 470• 「え」•

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